ロシアをSWIFTから排除する影響はロシアだけにとどまらない

ロシアのウクライナ侵攻による経済制裁について、欧米各国はついにロシアをSWIFTから排除することを決定したようです。SWIFTからの排除は経済制裁の切り札として検討されてきましたが、天然資源をロシアから多く輸入している欧州などへの影響からこれまでは見送られてきました。しかし、ロシアへのより厳しい制裁措置が必要との結論に至ったようです。このためロシアはより厳しい経済状況に追い込まれることとなります。そういうわけで今日はロシアのSWIFT排除について考えていきます。

SWIFTとは?

SWIFT(スイフト、スウィフト)とは、ベルギーの協同組合で世界中の銀行間の金融取引の仲介と実行の役割を担っている団体である。

引用:ウィキペディアより

SWIFTとは世界中の銀行間取引の仲介役を担っている機関で、世界中の金融機関による高額の金融決済の約半分を担っているといわれています。そのためSWIFTが利用できなくなると貿易での決済ができなくなり、貿易額が大幅に落ち込むことになります。

経済制裁の切り札として利用されてきた

過去にもイランなどが経済制裁としてSWIFTから排除されたために石油等を輸出できずに経済的な大打撃を受けたことがあります。このように問題を起こした国に対する経済制裁としてSWIFTの排除というカードは過去にも何度も使われてきました。そしてその影響は非常に大きく、排除された国はほとんど貿易ができなくなるため経済的にとても苦境に立たされることになるのです。ロシアも今回SWIFTから排除されると影響は甚大なものとなるでしょう。ロシアは主に石油や天然ガスなどの資源を海外に輸出して外貨を稼いでいます。それらの多くがこれからは外国へ輸出できなくなる可能性が高く、より厳しい状況に追い込まれることが予想されます。

影響はロシアだけに及ぶのではない

しかし、その影響はロシアだけではなく、日本や米国、特にロシアへのエネルギー依存度の高い欧州ではロシアほどとはいかなくとも大きな影響を受けるとみられます。ロシアが天然資源を輸出できないということは当然、今までロシアから入ってきていた資源は入ってこないということになります。そうなるとロシアの天然資源を多く輸入していた国ほど大きな影響を受けることとなります。特に欧州はロシアからの天然資源の輸入量が大きく、影響は避けられないものとみられます。米国や日本など諸外国にも全く影響がないということはないでしょう。ロシアからの天然資源が輸入できないとなればそれ以外の国からの天然資源の争奪戦となり、国際的な資源価格は上昇することが見込まれます。インフレ率が高止まりする中、その影響というのは非常に大きいとみられ、ただでさえ難しい金融政策のかじ取りがさらに難しくなる可能性も出てきます。また、ロシアはレアアースなども多く輸出していますので、日本はモノづくりにおいても大きな影響を受ける可能性があります。このようにロシアに対する経済制裁は我々に対しても大きな影響を与えることが避けられないのです。そのため、SWIFTからの排除というのは最初は経済制裁の項目には入っていませんでした。おそらくは欧州などの国から天然資源についての懸念があり、躊躇したものと思われます。しかし、世界中でロシアに対する抗議活動も活発になり、ロシアの軍事侵攻も全く緩む気配もありませんから決断せざるを得なかったというところでしょう。

SWIFT排除の影響がどの程度かはわからない

ロシアもおそらくはその可能性については考えていたはずです。欧米諸国が仮に経済制裁をするのであれば当然SWIFTからの排除というのも当然選択肢としてあり得る話です。なので準備はある程度していたと思われます。事実、ロシアは事前に欧米の金融機関から資産を引き揚げていた等のニュースもありました。それが本当かどうかはわかりませんが、少なくともSWIFTからの排除というのは予想の範囲であり、ロシアが軍事行動を改める制裁となるとは思えません。それよりもこれを機にロシアがSWIFT以外の決済手段を構築してしまうと非常に厄介なことになります。実際ロシアは2014年に独自の送金ネットワークを構築しているようです。

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今のところそのネットワークに参加しているのはほとんどロシアの金融機関らしいのであまり影響はないと思います。しかし、そのネットワークに中国が参加することを検討しているという話もあります。仮に中国がそのネットワークに参加するとなると、ロシアがSWIFTから排除されたとしても以前ほどの経済的なダメージは与えられないかもしれません。ロシアとしても欧米に輸出していた資源を中国など別の国に売る手段ができてしまえばSWIFTから排除されたからといって何の問題もなくなってしまいます。そのような仕組みができてしまうと今後は経済制裁というのがあまり意味がなくなる可能性も出てくるかもしれません。

まとめ

今日はロシアのSWIFT排除のニュースから今後の展開について考えてみました。ロシアの天然資源に依存が大きい欧州にとって今回の決定は非常につらいところだと思います。しかし、世論がここまでロシアに対する反発を強めてしまえばさすがに無視はできなくなったのでしょう。しかし、その影響は決して小さくないはずです。今後特に欧州では資源価格高騰による影響は甚大だと思います。ただでさえ天然ガスの値段が高騰し、光熱費が2倍、3倍になったなんて話も出てきています。そのうえでロシアへの制裁ですからさらに光熱費が上昇する可能性も高いはずです。その影響に欧州の人たちは耐えられるのかが非常に懸念されるところです。ロシアについても今回の侵攻に対する代償はやはり小さいものではないと思います。SWIFTから排除されることによる経済的な影響はやはり小さいとは思えませんし、独自の送金ネットワークについてもまだまだ未知数であり、少なくとも今回の制裁に対してすぐに有効に機能するとも思えません。なのでロシアの経済危機というのはしばらく継続するとみられます。日本や米国についても影響は小さくはないでしょう。特に資源価格への影響は避けられそうもなく、経済的にも厳しい状況が続くのではないかと思います。ただ、今回のウクライナ侵攻によって景気後退が起きるため、予想よりはFRBが緊縮に動かないのではないかとする意見もあります。そうであれば株式市場にとっては朗報でしょう。しかし、事態は依然不透明であり、予断は許さない状態だと思います。