日銀はどこまで円安を許容できるのか

日銀の黒田総裁は25日、衆議院の財務金融委員会で「現時点で円に対する信頼が失われたということではない」との答弁をしました。これは最近の急激な円安の動きに対してどのような考えを持っているのかということを確認するものであり、現時点では日銀は為替については危機感を持っていないようです。過去と比較しても現在の水準というのは特別異常ということはありませんし、慌てることはないとは思いますが、急激な為替の変動というのはどちらの方向に進むにしろ、あまり経済にとっていいとは思えません。それと今後の状況を考えるとさらに円安が進む可能性も十分に考えられるため、経済に与える影響や、どの程度日銀が円安を許容するのかということが注目されています。そういうわけで今日はこれからのドル円相場について考えてみたいと思います。

日銀は今のところ為替市場についての問題意識はない

先日、衆議院の財務金融委員会で日銀の黒田総裁は現在の為替水準について、特段の問題点はないという旨の答弁をしました。円安というのはトータルで考えれば日本経済にとってはプラスであり、現在の水準であれば問題がないということです。もちろん業種や状況によっては円安がマイナスに働くことも十分にあります。その点は十分に考慮するべきだとも言っています。特にウクライナ情勢などの影響により、食品やエネルギー価格などは最近は急激な上昇が続いており、注意が必要だともいっています。

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日本銀行の黒田東彦総裁は25日、最近の円安進行について「現時点で円に対する信頼が失われたということではない」と述べた上で…

今後はさらに円安が進む可能性が高い

しかし、これだけ急激な円安が進んでいるにもかかわらず、日銀は全く為替の動向を危険視している雰囲気を出していません。日米の金利差や、中央銀行の政策を考えるとますます円安は進んでいくものとみられます。そうなればヘッジファンドなどの機関投資家が短期的な利益を求めるため、為替市場に力を注いでくる可能性が十分に考えられます。明らかに円安に進むのですからそこに大きな資金を投入して、より利益を稼ぎ出そうというのは当然のことでしょう。なので円安圧力はさらに高まることとなり、予想以上に円安が進む可能性も十分にあるのではないかと思います。

日銀の考えるデッドラインはどこなのか

そこで注目されるのは、日銀がどの程度の水準まで円安を許容するのかということです。いくら円安が日本にとってプラスだからといって、際限なく円安になっていいとは思っていないはずです。当然デッドラインというのはどこかに存在します。なので今後はそのラインがどこなのかということが注目されるのです。機関投資家などもおそらくはそれがどの程度なのかを予想し、為替介入を仕掛けてくるでしょう。なので今後はしばらく急激な円安の進行と、日銀の市場介入による急激な円高など非常にあわただしい動きがあるかもしれません。市場介入はいきなり直接介入ということはないと思いますが、円安の行き過ぎをけん制するような発言をするだけで、市場は大きく反応するでしょう。今まで長期間にわたって金融緩和を続けていた日銀の姿勢に変化が出てくるとなればそのインパクトはかなりあるのではないかと思います。なので、その可能性をほのめかすだけでも十分に効果はあるでしょう。そういう意味でも今後は為替市場が大きく動く可能性があるのではないかと思っています。

まとめ

今日は今後の為替市場の動きについて考えてみました。今のところ日銀は為替水準について大きな問題を抱えているとは思っていないようです。なのでしばらくはこの円安の流れは続いていくでしょう。そしていずれかの段階で、円安を許容できなくなった日銀の姿勢が変化してくるものとみられます。そのラインがどのくらいかというのはよくわかりませんが、急激な円安により日銀の姿勢に変化が出てくることも意外とすぐに起こるのではないかと思います。そういう意味でも今後は特に為替市場の動きに注意する必要があるでしょう。