なんと円の購買力が半世紀前の水準まで落ちているようです。

日本は失われた30などと呼ばれる低成長の時代をずっと続けています。これは世界的に見ても非常にまれな出来事であり、放置していいものではありません。このままいけば日本は東南アジアなどの新興国にも抜かれ、先進国の地位を失うことになるでしょう。そうなれば国民生活も貧しくなり、国際政治の舞台でも発言力がなくなり、さらなる地位に低下という悪循環に陥ることとなる可能性もあります。そのために最低限、他国並みの成長をしなければなりませんが、なかなかうまくいっていません。その現状を表すかのような厳しいニュースが昨年末に報じられました。なんと日本の購買力が半世紀前の水準となってしまっているというのです。日本は成長していないだけではなく、過去の水準へと衰退しているのです。大変ショッキングなニュースですが、今日はこれについてみていきたいと思います。

記事について

そのニュースは12月27日の朝日新聞デジタルに掲載されました。その内容については以下の通りです。

この指標は、国際決済銀行(BIS)が毎月公表しており、「実質実効為替レート」と呼ばれる。約60カ国・地域の通貨を比較し、各国の物価水準なども考慮して総合的な通貨の実力を示す。数値が低いほど、海外からモノを買う際の割高感が高まる。円安が進むと、海外旅行で何かと割高に感じるのと同じだ。この指標をみると、日本円は昨年5月に80以上だったが、海外でコロナ後の景気回復への期待が先行して円安基調となり、下落傾向が続いた。今年10月に70を割り込み、11月に67・79まで下落。これは同様に円安が進んだ2015年6月以来の水準で、1972年8月と同じ値だ。過去最高だったのは、一時1ドル=79円台まで円高が進んだ95年4月で150・85だったので、その当時と比べ、大幅に海外のモノが高く感じる状態になっている。

引用:「円の購買力」半世紀前の水準に 国際決済銀行公表の指標より

このように見た目の為替レートだけではなく、物価水準などを考慮した実質実効為替レートでみると、現在の日本の円の力が相対的に弱くなっているというのです。この指摘がすべての面において正しいかどうかはわかりませんが、少なくとも日本円の価値が低下していくということ自体は間違いではないような気がします。ここ30年全く成長をしていないことや、物価が全く上がらないこと、賃金も上昇しないなど他国と比べて日本はその力を相対的に失っているということは正しいでしょう。その影響もあってか最近では価格の値上げの発表が相次いでいます。今までは何とか企業がコスト削減で価格上昇を抑えてきたようですが、それも限界ということです。このような動きは今後ますます加速するかもしれません。そうなると日本人は相対的に買えるものが少なくなり、ますます国民の生活は苦しくなることが予想されます。

レイ・ダリオ氏の発言を思い出させる。

今回の記事を読んで一番最初に思い出したのはレイ・ダリオ氏の富の考え方の話を聞いたことです。以前このブログでも書きましたが、ダリオ氏は富についての基準を購買力に置いています。現金や土地などの資産をいくら持っているかということではなく、どのくらいの物やサービスなどを購入できるかということが富の基準だというのです。この記事を読んだときは確かにそうだなと思い、非常に感銘を受けた記憶があります。どんなにお金を持ち、資産を築いたところで自分の必要なものやほしいものが買えなければ意味がありません。なので富の基準を試算ではなく購買力に置くというのは非常に理にかなったことだと思いました。現金や資産があるのであれば十分富を築けているだろうと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。その理由を説明するとき、最もわかりやすい現象が今世界中で起きています。日本や世界では株価は非常に堅調に推移しており、個人や企業の資産はとても増えています。各国中央銀行の政策もあり、市場に大量の資金が投入されているので、皆がお金持ちとなっています。日本の個人資産も約2000兆円になったと先日ニュースであったように、確実に資産は増えています。しかし、それにもかかわらず人々は豊かになっていません。その理由は資産が増えるよりも早く物価が上昇しているからです。いくら資産が増えてもそれ以上のペースで物価が上がれば購入できるものは少なくなります。それでは豊かとはいえないのです。このように購買力というのは人々の豊かさの基準として非常に重要であり、それを毀損するような事態は避けなければいけないのです。

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結局は成長しなければいけないという結論に至る

そのために何をしなければいけないかというと結局は生産性を高め、成長をしなければならないということになります。いつまでも全く成長をせずにいては、購買力が落ちていくのは目に見えています。そのような状態で小手先の小細工をしたところで結局は問題の先送りをするだけです。そうならないようにもきちんと成長をし、価値を創造できるようにならないといけません。でなければ購買力はどんどん下がり、日本は本当に貧しい国となってしまうでしょう。規制改革や、積極的な投資を進め、日本が少なくとも他国並みに成長ができるように期待したいところです。

まとめ

今日は円の購買力の低下について考えてきました。日本の購買力の低下は本当に深刻な問題です。今までは大きな貯蓄があったので何とかなっていましたが、それももう限界でしょう。企業がコストアップを吸収できず、価格転嫁を始めたことからもそれがよくわかります。これからは我々国民も自分の購買力を付ける努力をしなければ物が買えなくなる時代が来る可能性が非常に高いと思います。そういう中においても自分自身の努力によって購買力を維持することは可能だと思います。むしろそういう時だからこそ投資のチャンスというのはいたるところに落ちているものです。そういう意味でもきちんと世の中の動きを監視し、購買力が落ちることがないよう勉強は怠らないようにしたいものです。