トルコリラ暴落に見る新興市場投資のリスク

以前トルコリラは高い金利のため、個人投資家から人気がありました。しかし、現在は非常に高いインフレと経済危機のためトルコリラは暴落しています。トルコはエルドアン大統領のいわゆる独裁制政権のため、かなり無理な政策をしているようで、その影響もあって通貨暴落が止まりません。現在は少し落ち着いているようですが、まだまだ油断はできない状況です。そういうわけで今日はトルコリラについてみていきたいと思います。

年末にかけてトルコリラは大きく下落

下の図はこの一年のトルコリラと米ドルのレートです。

引用:investing.comより

チャートを見てもわかるように、去年の年末にかけて急激にトルコリラが下落していることが分かります。理由としては今世界的に起こっているインフレが関係していますが、それだけではなく、中央銀行が利下げを行ったことにもあります。米国の動きを見てもわかるように、通常、インフレが起こった場合は利上げを行い、インフレを抑制しようとします。しかし、なぜかトルコでは利上げではなく利下げが行われました。原因は中央銀行の失策ではなく、エルドアン大統領の通貨安政策にあると思われます。大統領は通貨安により、輸出の大幅な増加をめざし、成長をしていこうとしているのです。正直それが正しいのかどうかはわかりませんが、今起きていることを考えればとても正しいとは言えないような気がします。おそらくトルコ国内でも異論は多くあるはずですが、現在トルコはエルドアン大統領の独裁政権状態です。なので誰も文句は言えないのでしょう。実際利下げを行わない中央銀行のトップを大統領が解任したりしています。このような現状を見る限り、トルコの経済的危機はしばらく収まるようには思えません。

政策に失敗による悲劇

そのような中で、トルコ国内では隣国からの大量の買い物客が押し寄せてきています。トルコリラの大幅な下落により、自国で買うよりもトルコで買い物をした方が得だということです。トルコに限らず今は世界中でインフレが進行しています。ですから、少しでも安く物を買おうというのはいたって自然な動きです。そんな中隣国の通貨が暴落し、商品がが安く買えるとなれば買い物客が押し寄せるのは当然でしょう。トルコではブルガリアやギリシャからの買い物客が大量に商品を買いあさる光景がよくみられるそうです。ある意味市場原理が正常に機能している証拠のような気もしますが、とても喜べる状況ではないでしょう。隣国の買い物客はいいかもしれませんが、そこに住むトルコ国民は非常に悲惨な目に合っています。これだけ通貨が暴落すれば当然自分たちの購買力は低下します。外国人たちが商品をまとめ買いする横ではトルコ国民が安いパンを求めて行列を作っています。これは明らかな悲劇であり、政策の失敗です。購買力の低下というのはこのような事態を招くことになるので絶対に避ける必要があります。

投資する市場、株などの投資対象は慎重に選ぶべき

高金利であるということは投資家にとっては非常に魅力的であることは間違いありません。しかし、金利が高いということはそれだけリスクがあるということの裏返しでもあります。そういう意味でトルコリラというのはいい投資商品ではなかったということでしょう。少なくとも正常な市場原理が機能せず、独裁的な政権が力を行使するような国の通貨や株などの投資商品には手を出すべきではありません。投資をするときはきちんと投資環境が整えてあり、市場原理が機能するものかどうかを見極める必要があるのです。今回のトルコリラの暴落というのはそのことを改めて認識させてもらえた事案だと思います。なので私は基本的には日本や米国などの先進国のみを投資対象としています。新興国も有望な市場であるということに異論はありませんが、リスクとのバランスにおいて投資対象とは見ることができません。少なくとも一般の個人投資家が手を出すべきではないと思います。それでも投資したいというのであればバランス型の投資信託やETFなどでリスクを分散するのがいいでしょう。

まとめ

今日はトルコリラの暴落について述べてきました。今回の事案を見ると、本当に新興国に投資をするのは怖いと思いました。日本や米国も問題はたくさんあるとは思いますが、さすがにここまでの通貨暴落というのは起こりづらいでしょう。正直、円や米ドルがこのような事態になったらどうなるのだろうと興味は起こりますが、絶対に体験はしたくないなと思います。やはり個人投資家はおとなしくインデックスに投資するか、安定した優良企業に投資しておくのが無難でしょう。それ以上のことを求めるのであればそれなりのリスクを覚悟する必要があるということです。