高インフレが常態化しそうなとき、我々投資家にできること

米国のインフレは一向に収まる気配を見せません。FRBはこのインフレは一時的なものだといっていますが、その意見には多くの識者から疑問符がつけられています。日本にいるとあまり感じませんが、最近の世界中で起こっているインフレは間違いなく世界経済の足かせとなることでしょう。国内でも企業物価はかなり上昇してきています。消費者物価の転嫁はまだそこまで広がっていませんが、ガソリンや食品などの値上げが相次いで発表されており、我々にとっても身近な問題となりつつあります。非常に大きな問題ですが、我々投資家はどうしたらいいのでしょうか。現状を整理しつつ考えてみたいと思います。

現在の状況

米国のインフレ率は過去30年の中で最も急速に進んでいます。それは実際に生活をしていても顕著に感じるようで、先日マネックス証券会長の松本大さんのレポートにもそのことは書いてありました。そこにはたった数か月で物価の上昇を感じることができるというのです。アメリカでは日本のように消費者に価格を転嫁することをあまりためらわないようです。そのせいもあり、最近は物価の上昇が急激に起こっています。

ビバ日本 | 松本大のつぶやき | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

昨日アメリカに着きました。ニューヨーク前に一カ所寄っていて、ニューヨークには明日(現地時間月曜日)入ります。まだ短い滞在…

ほとんどのカテゴリーで物価は上昇している

引用:トウシル ドル/円が115円を突破!どこまで上昇するのか!?より

この図はアメリカでの消費者物価の上昇を示しています。一年前から毎月のように物価は上昇しており、下落はもちろん、変化なしという月が一つもありません。その結果ほとんどの物価は大きく上昇し、この図に示してあるカテゴリーはこの一年で二けた以上の上昇をしています。中でも車関係の上昇が顕著で、ガソリンは51%、中古車は26%、レンタカーは39%と非常に高い上昇を示しています。ご存じの通り、アメリカは車社会です。ガソリン価格など車に関する価格の上昇は国民生活を直撃します。節約するにも限界がありますから、景気にも大きな影響を与えるでしょう。なによりも、その不満は直接政治に向けられるので、政権としても、とても頭の痛い問題となっています。最近行われた世界中で協調して石油備蓄を放出するということも、バイデン政権による国内対策が大きな要因ではないかと思っています。正直こんなことで原油価格が下落するとは思えませんし、事実、市場はすでにそれを織り込み価格は上昇し始めています。しかし、それでもやらないよりはましと思えるほど、政権は追い詰められているということです。それだけ現在のインフレはアメリカにとって重大な問題なのです。

レイ・ダリオ氏の言葉

現在のインフレについて著名な投資家であるレイ・ダリオ氏は以下のようなことを述べているようです。

 現時点では、1)政府が大量のお金を印刷し、2)人々が大量のお金を手に入れ、3)それが大量の買いを生み、さらに大量のインフレを引き起こしている。一部の人々は、自分の購買力がどのように損なわれているかを見ずに、自分の資産が値上がりしているので、自分がより豊かになっていると勘違いしている。富の衰退=権力の衰退。購買力を失って失敗しなかった個人、組織、国、帝国はない。成功するためには、少なくとも支出額と同等の収入を得なければならない。控えめに使って黒字を出している人は、たくさん稼いで赤字を出している人よりも、持続的に成功している。歴史を振り返ると、個人、組織、国、帝国が収入以上の支出をすると、不幸と混乱が待ち受けている。また、自給自足をする人の割合が高い国は、社会的にも政治的にも経済的にも安定している傾向があることも歴史が示している。現在の米国は、稼いだお金よりも多くのお金を使い、そのためにお金を印刷しては切り下げている。改善するためには、生産性と協調性を高めなければならない。今、私たちは間違った道を歩んでいる。

引用:トウシル ドル/円が115円を突破!どこまで上昇するのか!?より

政府による大量の資金の投入の結果、企業も個人も非常に多くの資産を築くことができました。しかし、それはあくまで見た目上の話で、それ以上のインフレが起こってしまえば実質的には購買力は低下します。その結果国民は貧しくなっているのにもかかわらず、資産は一見して増えているのでそのことに気づいていないといっているのです。今は何とかなっていますが、この状況が続けばアメリカ経済は大打撃を受け、とてつもない不況に陥るでしょう。そうならないためにも生産性を高めなければならないといっています。

我々投資家ができること

今後の世界はどうなるのでしょうか。多くの識者は今後も高インフレの状態は続くとみています。FRBは一時的とみていますし、テーパリングも開始しました。おそらくは来年以降には金利も上昇していくでしょう。しかし、この高すぎるインフレの流れを変えることはできないでしょう。もちろんFRBがうまくかじ取りをし、インフレをうまくコントロールできれば、このまま景気は拡大を続けるかもしれません。しかし、現状ではなかなかその可能性は見いだせないのが現状です。であれば我々は自分の身を守るために行動しなければなりません。 バンク・オブ・アメリカのアナリストは、「ボラティリティ指標や原油、エネルギー、米ドル、実物資産に対するロングポジションを含む推奨する」といっています。やはり物価が上昇していきますから、実物資産に投資をした方がいいでしょう。少なくともインフレ率を上回る資産上昇をさせないと実質的には購買力が低下することになります。そうならないように今から準備しておく必要があるのです。

まとめ

今回は現在起きているインフレについて、現状把握と今後についてみていきました。アメリカのインフレというのは相当なようで、数か月で物価の上昇を体感できるというのはかなりのものです。アメリカで暮らしている人は相当の苦労をしていることでしょう。中央銀行がうまくかじ取りできればいいのですが、なかなか難しいのではないかと思っています。もう中間選挙まで時間はありません。政府も国民の反発を抑えるためにまた大きな給付を行うかもしれませんし、そうなればますますインフレは加速するでしょう。そのようなジレンマを抱え、アメリカという国がうまくコントロールできるのか慎重に見ていく必要がありそうです。それはもちろん日本や世界にとっても重要なことだからです。対して日本は上がってきたといっても物価はアメリカほどは上がっていません。なので、購買力を保つことはアメリカ国民よりもたやすいでしょう。そういう意味では我々日本人は恵まれているような気がします。そのためにはしっかりと自分で考え、行動しなければなりません。