円安はメリットばかりではない。デメリットもある。

円安の進行が止まりません。ドル円は128円を超え、さらなる円安を目指しているようにも見えます。以前は円安は日本経済にとってプラスとみられていたので株式市場も上昇することが多かったように思えますが、最近ではあまり為替と株価には連動性がみられないようになりました。そういう意味では円安が単純に日本経済にプラスということではないのだろうともいます。というわけで今日は最近の円安について考えてみたいと思います。

日銀黒田総裁が円安のデメリットを指摘

日銀の黒田総裁は円安は全体として経済にとってプラスであるが、マイナスの面も考慮しなければならないという旨の発言をしました。

[東京 18日 ロイター] – 日銀の黒田東彦総裁は18日、衆院決算行政監視委員会で円安は全体として日本経済にプラスとの持論を繰り返す一方で、マイナス面にも考慮が必要と指摘した。同席した鈴木俊一財務相は十分な価格転嫁や賃上げが実現しない状況での円安は悪い円安との見解を改めて説明した。藤岡隆雄委員(立憲)への答弁。

引用:ロイターより

これまで円安は日本経済にとってプラスという発言が多かった黒田総裁から円安のデメリットについての発言が出るということは大きな意味があるような気がします。もちろん為替の水準というのは円安になろうと円高になろうとメリットデメリットがあるのは当然ですし、黒田総裁もそのことは十分認識していただろうとは思います。しかし、公の場でそのような発言をしたという意味は小さくないと思いますし、市場関係者にとっても日銀がどの程度の為替水準を望んでいるのかということを判断する材料として有用なものでしょう。今のところ金融緩和の姿勢は変えるつもりはないようですし、このまま大きな政策変更はないとは思いますが、どこまでも行くような円安を許容しているわけではないし、きちんと監視はしているぞという姿勢を見せたのかなと思います。

経団連も過度な円安は日本にとってプラスではないと感じている

経団連の十倉会長は18日の記者会見で円安になれば単純に日本経済にとってプラスになるわけではないという発言をしました。

[東京 18日 ロイター] – 経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は18日の記者会見で、円の対ドル相場が126円後半と20年ぶり安値をつけたことに関連し「昔は円安になれば貿易収支も経常収支も経済もよかったという、そう単純なものでなくなっている」と述べ、急速な円安進行に警戒感を示した。

引用:ロイターより

十倉会長は円安と資源高が同時に進行しており、日本経済にとって悪影響が出かねないとの懸念を示しました。経団連会長から円安が日本にとって悪影響があるとの発言が出るということはとても大きな意味があるものでしょう。多くの識者が円安になれば単純に日本経済にとってプラスになるわけではもうないという発言をしています。そして経済界のトップからも同じような発言が出てくるということはそれを裏付けるのに十分であるのだろうと思います。

為替には適正水準というものがあるの

個人的には為替というのは安ければよいとか高ければよいというものではないのだろうと思っています。あくまで適正水準というものがあって、それよりも高くても安くてもよくないということなのでしょう。昔は国内に多くの製造業の拠点などがあり、円安になればその恩恵を多く受けるために円安のデメリットを帳消しにできたのです。しかし、今は多くの企業は拠点を海外に移していますし、以前ほど円安のメリットを享受しにくくなっているのだと思います。もちろんそれだけではないでしょうが、以前ほど円安が日本にとってメリットがなくなった理由というのはいくつか考えられるのではないかと思います。いずれにせよ黒田総裁も十倉会長も現在の金融政策自体を変更する必要性は感じていないようです。なので大きな金融政策の変更は行われないでしょう。そういう意味ではしばらく円安傾向は続いていくものと思われます。そしてそれがどの程度まで日銀や経済界が許容できるのかはわかりませんが、それが許容できるまでは円安が続いていくはずです。そのくらい日米の金融政策には違いがあり、この流れが止まるとは到底思えません。しばらくはこの状況が続いていくのでしょう。

まとめ

今日は現在の円安の流れについてみてきました。円安が単純に日本にとってプラスという時代は終わったといっていいのだろうと思います。そういう意味では日本という国の在り方が今後変わっていくのではないかと思います。なので我々国民も今までの価値観を改める必要があるのかもしれません。どのような為替水準が正しいのかはわかりませんが、円安がいいとか円高がいいとかではなく、適正な水準を維持するという感じになるのではないかと思います。