日銀が物価見通しを引き上げるようですが、まだインフレには程遠い。

日本でも最近はかなり物価の上昇を感じるようになってきています。食品やガソリンなどのエネルギー価格の上昇は確実に家計を圧迫してきており、非常に厳しい状況がつづいています。現在の世界的なインフレの流れやウクライナ情勢などの影響も考えるとしばらくこの動きは続いていくのでしょう。ただ、日本においてはいまだに物価の上昇は海外に比べるとあまり起こっていないのが現状です。食品やエネルギーなどの価格は上昇していますが、物価についてみるといまだにインフレとは言えない状態です。本当に日本は特殊な国だなと感じてしまいます。そういうわけで今日は日本の物価についてみていきたいと思います。

日銀が22年度の物価見通しを引き揚げ

15日のニュースで日銀が次の金融政策決定会合で物価の見通しを引き上げる可能性について言及していました。

[東京 15日 ロイター] – 日銀は27―28日の金融政策決定会合で、2022年度物価見通しの上方修正を検討する見通しだ。ロシアによるウクライナ侵攻で原油価格が高騰したことなどを反映し、プラス1%台後半に引き上げる可能性がある。複数の関係筋が明らかにした。一方で、資源高は企業収益や実質所得の減少を通じて景気の下押し圧力となるため、22年度の実質国内総生産(GDP)予想は下方修正を検討する。

引用:ロイターより

最近のエネルギー価格の上昇や食品価格の上昇の影響により今年度の物価は上昇するとの見通しのようです。そのためGDPも下方修正される見込みであり、日本経済にとっては非常に厳しい事態に陥るようです。

全体の物価はまだマイナス

しかし、変動の激しい食品とエネルギーを除いたいわゆるコアコアと呼ばれるものについてはいまだに物価はマイナスです。2月の数値では以下のようになっています。

  • 総合CPI 0.9
  • コアCPI 0.6
  • コアコアCPI ▲1.0

このように日本は一部の価格は上昇をしていますが、全体としてはまだ物価は下落しており、インフレとは程遠い状態なのです。海外では物価は非常に上昇しています。例えば米国では物価はすでに8%近い上昇を続けており、日本のコアコアCPIに相当するものも6%半ば程度の上昇をしています。なのでFRBはインフレ退治に躍起になっているのです。しかし、日本は一部食品やエネルギー価格は上昇していますが、まだ物価の上昇は起こっていないというのが現状です。これはいわゆるGDPギャップと呼ばれるもので、需要が供給に全く追いついていないために、コストを価格に転嫁できない状態になっているのです。この状態で価格を上げたとしても消費者はそれを受け入れることはないでしょう。この状態を解消するには需要がもっと高くなるようにしなければなりません。需要が高くなれば当然価格が上昇してもそれを吸収することができるので、そこで初めて物価が上昇していくのです。日本はまだそこまでの状態にはなっていないので、なかなか物価が上がっていかないのです。

やるべきことは金融政策ではないような気がする

なので現在の状態で米国のような金融政策で緩和縮小のようなことを行うとただでさえ物価が上昇していないところへさらに追い打ちをかけるような状態になります。そうなったら日本経済はさらに悪化することになるでしょう。なので物価全体に対する政策よりも個別の価格に対する政策の方がいいような気がします。特にエネルギーについてはトリガー条項の撤廃などやれることはまだあるのでそちらからやった方がいいと思います。食品についてももっと食料自給率を上げるような政策をするべきです。いつまでも海外に依存するような状態だと食糧安全保障という観点から見ても非常にまずいでしょう。いざというときに国が傾く可能性が出てきます。ウクライナ情勢によりロシアは厳しい経済状況になっていますが、意外とロシアは何とかなっているような感じです。理由はいろいろあると思いますが、その要因の一つに食料自給率が100%を超えていることがあります。つまりロシアは何が起ころうとも食料を自給できるために、食べられなくなるということにはならないのです。これは国家にとって非常に心強いことです。逆に日本は食料自給率は40%程度と、とてもじゃないですが何か有事が起きた時には生きていくことができません。そうならないためにももっと国内農業を改革し、自給率を高める努力をすべきだと思います。

まとめ

今日は今後の日本の物価見通しについてみてきました。今後は海外と同様に物価は上昇していくことは間違いないでしょう。ただ、一部食品やエネルギーを除けばまだ日本はインフレというには程遠い状況です。なのでその対応というのは諸外国と同じようにしていてはいけないと思います。もちろん簡単なことではないとは思いますが、まだまだやれることはたくさんありますし、それだけポテンシャルは残っているともいえます。そういう意味でも日銀の政策がどうというよりもやるべきは政治の問題なのではないかと感じています。