日銀の金融政策決定会合については予想の範囲内。しかし、気になるのはやはり審議委員のほう。

18日、注目されていた日銀の金融政策決定会合が行われました。内容としては概ね事前の予想通りという内容であり、大きなサプライズはありませんでした。米国など海外では政策金利を上げていく流れができています。日本もそれに追随するのかという懸念もありましたが、流石にそうはならなかったようです。まだ日本はそれほど物価は上昇していませんので当然といえば当然ですが、やはりその懸念が払拭されたことは良かったのではないかと思います。そういうわけで今日は先日行われた日銀の金融政策決定会合について見ていきたいと思います。

会合の詳細

18日に行われた金融政策決定会合では現在行われている金融緩和政策が維持されることとなりました。ただ、景気判断の下方修正と原油高などによる物価の見通しについては強めの判断へと修正されました。また、ウクライナ情勢が日本経済に与える影響は無視できないようで、今後の不確実性が高いと見解を示しました。

[東京 18日 ロイター] – 日銀は17─18日に開いた金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)付き量的・質的金融緩和政策の継続を賛成多数で決定した。個人消費の鈍化で景気の現状判断を引き下げ、原油高騰で物価見通しを強めの表現に変更したが、景気回復シナリオは維持した。ウクライナ情勢が「日本の経済・物価に及ぼす影響はきわめて不確実性が高い」とし、新型コロナウイルス感染症の動向とともに注意が必要だとした。

参照:ロイター

金融緩和政策が維持されたということは市場の予想通りであり、大きなサプライズはありませんでした。しかし、現状の景気判断については1月のレポートの表現よりも一段階弱いものとなり、景気についての警戒感が現れるものとなりました。

景気の現状判断は「感染症の影響などから一部に弱めの動きも見られるが、基調としては持ち直している」とし、前回1月展望リポートの「持ち直しが明確化している」との表現から後退した。

参照:ロイター

その他についてもおおむね現状維持か一段階の下方修正という感じであり、現在の経済状況について日銀はより慎重に見ていることが分かります。特に個人消費の鈍化と物価上昇、ウクライナ情勢については非常に警戒しているようであり、この辺りの状況次第では金融政策も変化してくるのかもしれません。

日経平均株価は上昇

今回の発表を受けて日経平均株価は上昇しました。これは市場の予想の範囲であり、大きな影響は与えなかったのではないかと思います。むしろ米国市場が上昇したことによる影響の方が大きかったでしょう。いつも言っていますが、日本市場は海外、特に米国の影響を大きく受けます。なので国内事情よりも海外の動きを見ていた方が動きは予想しやすいです。

為替は円安が進む

為替については一時1ドル119円台に乗せるなど円安に進みました。いろいろ言われていますが、やはり日米に金利差が今後も開いていくであろうことを見越した動きだと思われます。米国はこれからかなりのペースで利上げが進んでいくものとみられます。そして日本は今のところ金融緩和政策を維持する見込みです。であれば当然日米の金利差が開いていき、より金利の高い米ドルの方が買われる展開になるのは自然な流れでしょう。日銀の黒田総裁は円安についてはあまり問題視していないようなのでしばらくはこのままいくと思われますが、あまりに円安が進むと輸入物価の急激な上昇を招き、国内経済に影響を与えることも考えられます。なのでこのまま円安が進んでいくというのはもしかしたら望んでいない可能性もあります。そのラインがどの程度かというのはわかりませんが、この先、日銀の姿勢にも変化が出てくる可能性があります。そういう意味でも黒田総裁の発言には注目していきたいです。

片岡氏の退任が与える影響

今回の政策金利の目標について現状を維持するというのは賛成8、反対1という結果でした。そしてその反対1というのが7月に退任される片岡審議委員でした。片岡氏は非常に強硬なリフレ派であり、常に日銀はもっと金融緩和するべきというスタンスをとってきました。そして今回も現状維持では生ぬるいという意味で反対票を投じています。この姿勢が正しいのかということはわかりませんが、少なくともこのような強い金融緩和をするべきという人がもうすぐ退任するということは事実です。そして後任の高田氏は明らかにこのような強い金融緩和のスタンスの人ではありません。なので7月以降は日銀の金融政策が少しずつ変わる可能性があるということです。いきなり大きく転換するということはないと思いますが、強力な金融緩和派がいなくなる影響はそれなりにあるでしょう。

まとめ

今日は先日行われた日銀の金融政策決定会合についてみていきました。おおむね予想通りの内容でしたが、日銀はより日本経済について警戒していることが分かるものでありました。そういう意味では今後の金融政策については慎重に見ていく必要があると思います。特に物価上昇が今後も続いていくであろうことを考えると日銀がどこまでそれを許容するのかということが注目されます。また、為替についても同様であり、物価が上昇している中であまりにも急激な円安というのはさすがに許容できないのではないかと思います。なのでもしかしたら日銀の姿勢にも変化が出てくる可能性は否定できないと思います。それとやはり片岡氏が退任するという事実は日銀の政策に大きな影響を与えるのではないかと思います。今回ももっと緩和をしろという意味で反対をしています。このような人はなかなかいないと思いますし、実際後任の高田氏はそのような人ではありません。なので物価や世界情勢を含め、今後は日銀の政策というのは大きく転換する可能性もあるのではないかと感じています。