NISAに課税ってどういうこと?

いよいよ今日は衆議院選挙の日です。私も今日投票にいきますが、ネットで選挙のニュースを見ていてびっくりするようなものを見つけました。立憲民主党の江田憲司代表代行が28日のニュース番組で、「NISAへ課税する」と発言したそうです。ここのところ忙しかったせいで、政治ニュースのチェックがあまりできていなかったんですが、これまたとんでもない発言をしたものだと思います。案の定ネットでもかなり炎上していたようですね。少々遅れた感じがしますが、まだ投票をしていない人もいるでしょうし、しっかりと意思表示する意味も込めて私も反対意見を述べたいと思います。

発言内容について

この発言は28日放送のBSフジ、「プライムニュース」内での立憲民主党、江田憲司代表代行発言です。番組内でいわゆる「一億円の壁」と呼ばれる、高所得者ほど税負担が減る問題について議論していました。そこで、司会者の反町氏が

「中低所得者の行っているNISAなどにも同じように課税するのか?」

との質問に

「同じように掛けますよ」

と発言しました。さらにもう一度NISAにも課税するのかという司会者の確認の問いに対しても、発言は訂正せず掛けるといい、出演者の三浦瑠璃氏があきれるさまが放送されました。

参照:ニコニコニュース 立憲・江田代表代行、NISAに課税「30%同じようにかけます」発言が大問題に? 国民・玉木代表も指摘

NISAとは

通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。

引用:金融庁より 

まずおさらいですが、NISAとは上記にある通り、通常、金融商品の売買益や配当にかかる税金を一定の範囲内において非課税にしますという制度です。いわゆる「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと始まった政策で、今まで投資に興味なかった人たちにも投資をしてもらおうというものです。もともと日本は諸外国に比べ、投資に回すお金の割合がとても少なく、ほとんどを貯金で運用するという国でした。日本の年金制度や財政の問題が叫ばれるようになっていたこともあり、国民一人一人が投資をしてもらった方が都合がいいということもあったのだと思います。そんなわけで、NISAという制度が作られました。その結果、今や若い人をはじめ、多くの人がNISAやiDecoなどをいわゆる税の優遇政策を利用して投資をするようになっています。

なぜ低所得者を苦しめようとするのか

今回の発言を聞いたときは、何かの間違いかと思いました。そもそも、「税金を免除しますよ」という政策に対して「課税します」という、180度真逆のことを言っています。明らかに矛盾している発言です。選挙期間ということもあり、いつものフェイクニュースの類かと思い、調べてみたら本当に発言していてびっくりしました。NISAやiDecoなどの優遇政策は富裕層ではなく、あきらかに若い人など低所得者層向けの政策です。これらの政策は、若いときから投資に関心を持ってもらい、資産形成の重要性を知るとてもいい政策だと思います。私の若いころはこういうものは全くなかったので、今の若い人は本当にうらやましいと思います。そんな弱者のための政策を根本から否定するようなことを、野党第一党の有力者が発言するなんてありえないと思います。この発言については国民民主党の玉木代表がツイッターで厳しく否定しています。さらに共闘している共産党の志位委員長も同じくツイッターでNISAへの課税は否定していて、本当にこの発言は問題外だということがよくわかります。その後、立憲民主党の枝野代表もこの件に関しては党の方針と違うことを発信し、江田代表代行もさすがにまずいと思ったのか、すぐさま訂正・謝罪をしています。

参照:国民民主党玉木代表のツイッター 

共産党志位委員長のツイッター 

立憲民主党枝野代表の発言 

立憲民主党江田代表代行の発言  

分配よりも重要なのは成長

分配をしなければいけないということはわかります。これは日本だけでなく、世界でも問題になっていることで、格差の問題は本当に深刻だと思います。しかし、それでも日本はまだ諸外国よりはまだまだましで、アメリカや新興国などに比べるとたいしたことはありません。たしかに昔に比べると格差は広がっていることは事実ですが、問題は分配ではなく、まったく成長しない経済にあります。この30年にわたるデフレによる低成長のせいで日本はもはや豊かな国ではなくなっているのです。貧乏な人同士、富を分けたところでみんなが等しく貧しくなるだけです。そうならないためにも賃金を上昇させられるように、成長をしていかないといけないのです。

参照:日本総研 国際比較で見た所得格差の状況ーアメリカの特殊性と日本の課題

まとめ

今回の発言はきちんと訂正・謝罪されていますし、立憲民主党、共産党のどちらの党も否定しているので、仮に野党が政権をとったところで実行されることはないでしょう。しかし、野党第一党の有力者がこのような認識でいたということは、正直残念でなりません。国の借金が大変だということが叫ばれるようになったせいか、与党も野党もこのような庶民を苦しめるような発言が多くみられるような気がします。自民党も、金融所得課税について増税すると言ったり、立憲民主党も今回の発言自体は撤回しましたが、金融所得課税を強化するということは以前お話しした通り、しっかり公約に入っています。プライマリーバランスの黒字化や分配などが大切だということはわかりますが、それよりも大切なのは成長です。成長ができなければどんなにプライマリーバランスが健全になっても、分配がしっかりできても日本人が等しく貧しくなるだけです。何も昔のような高成長をしろと言っているのではありません。諸外国と同じような2%程度の成長をさせようといっているのです。そうすることで初めてプライマリーバランスの健全化や、分配の前提が出来上がると思います。残念ながら今回の選挙では、この成長に関する議論があまり行われず、与党も野党もとにかく分配一色です。こんなことで本当に日本の将来は大丈夫なのかと心配になります。しかし、そうはいっても国会議員を選ばないわけにはいかないので、投票には行きます。消極的支持という悲しい結論になりそうですが、仕方ありません。でも、これで終わりというわけではありません。明るい未来を作るべく、希望をもってしっかりと政治に関心を持ち、声を上げていきましょう。