24年ぶりの円買い介入。だがその効果は非常に限定的だろう。

22日、約24年ぶりとなり円買い介入が行われました。ドル円レートは145円を超える水準になるなど米国の利上げの影響もあり、円安が進んでいました。そのため政府は市場介入に踏み切る形となりましたが果たしてその効果というのはどの程度あるものなのでしょうか。個人的には一時的なものでしかなく、あまり為替を落ち着かせるほどの効果はないのではないかと思っています。そういうわけで今日は先日行われた円買い介入についてみていきます。

24年ぶりの円買い介入

政府・日銀は22日約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの市場介入を行いました。

政府・日本銀行は22日夕、円買い・ドル売りの為替介入を実施した。日米金利差の拡大を背景に急激に円安が進む中、24年ぶりの円買い介入によって過度な円安を阻止する姿勢を示した。

  鈴木俊一財務相は会見で、為替市場で投機的な動きを背景に急速で一方的な動きが起きているとし、「投機による過度な変動は決して見過ごせない」と介入の理由を説明した。協調介入かどうかについても明言せず「関係通貨当局とは常に連絡を取り合っている」と述べるにとどめた。

引用:Bloombergより

9月のFOMCの結果、米国では更なる金利上昇が見込まれており、日米の金利差がさらに大きくなるとの思惑からドルが買われ、円が売られる展開となっていました。そのため為替市場では一時1ドル145円を超える水準まで円安ドル高が進んでいました。しかし、政府・日銀による市場介入が行われ、その後は1ドル140円台にまで為替は大きく円高に振れることになります。

円買いには限度がある

今回の流れにより、政府・日銀としては1ドル145円という水準が一つのラインとして意識されていることがわかりました。そのため今後もこの水準に到達すると介入をしてくる可能性があります。しかし、個人的にはあまりこの介入の効果というのは長く持たないのだろうという印象です。理由としては円買い介入というのは円を買うということはドルと売るということになりますが、保有しているドルというのは有限であるということです。円売り介入であれば円を発行できる日銀が好きなだけ円を発行し、円を売ればいいだけです。なので制限は一切ありません。しかし、円買いとなると円を買うための資金が必要であり、それは今持っているドルや米国債などの資産が限度となってしまいます。なので円買い介入には限度があるのです。そのためいつまでもこの水準を保つために介入を続けるというわけにはいかないのです。

単独介入の効果は限定的

また、今回の為替介入は日本だけの単独介入である可能性が高く、その効果は非常に限定的であるということです。過去に行われた為替介入で大きな効果を上げたものというのは単独ではなく各国が協調して介入した場合です。有名なのはプラザ合意で行われたものなどがあります。このように多くの国が協調して介入を行えばその効果は絶大なものとなり、十分に市場を落ち着かせる効果もあるでしょう。しかし、今回はそうでない可能性があります。日本の為替介入を受けて、カナダと米国は今回の介入には参加していないことを明言しました。

米財務省は22日、日本が同日実施した円買い・ドル売りの為替介入について「日本の行動を理解している」と表明した。円相場の急変動を抑える目的であることを認め、容認する内容だ。米国は今回の介入に関わっていないとも明らかにした。

引用:日本経済新聞より

カナダ銀行(中央銀行)の広報担当幹部は22日、「カナダ銀行はいかなる為替介入にも関与していない」と述べ、日銀が22日に行った為替介入に参加していないことを明らかにした。

引用:ロイターより

このように今回の介入は日本単独による可能性が非常に高いです。そのためその効果は長続きはしないでしょう。短期的には円高に振れるとは思いますが、すぐにまた145円を目指す展開となると思われます。なので今回の介入の効果というのは一時的であるとみた方がいいと思います。

とりあえず米国の了承は得ていたと思われる

今回の介入について、あまり効果がないだろうということを述べましたが、当然ながら政府・日銀もわかっているとは思います。おそらく事前に米国などとは協議をしたと思いますし、このタイミングで岸田総理は米国へ向かっています。そういう意味では勝手に日本が行ったとはさすがに考えにくいです。そして協議の結果、米国からは協力を得られないこともわかっていたでしょう。インフレが進む中、ドル高というのは米国にとっても望ましい展開のはずです。それを修正しようとする動きには賛成するとは思えません。なので、協力しないまでも見逃してほしいと要請し、その了承を得たので介入を行ったのだろうと思います。

今後は円高に振れる可能性も大きい

そこまでして効果の薄い介入を行ったというのはとりあえず何もしないわけにはいかないということと、今を乗り切ればとりあえず円安は収まるという思惑があったのかなと思います。これだけ急激な為替の動きがあるのに何もしないのであれば大きな批判を受けることになるでしょう。なのでとりあえずそのポーズは見せる必要があったということです。それと、現在の円安はそう長くは続かないということです。現在の円安は正確に言うとドル高です。つまり円が安くなっているのではなくドルが高くなっているのです。ドルは世界中の通貨に対して高くなっています。何も円だけが特別なのではありません。そしてその大きな原因の一つがFRBの金融政策ですが、その利上げというのもいつかは終わります。そうなれば金利差は広がることはなく、それ以上ドルを買う理由にはなりません。むしろそれからは景気回復のための緩和の動きも予想され、そうなれば今度はドル安、つまり円高になる可能性も十分にあり得るのです。そして来年にはそのような展開になるという予想はたくさん出てきています。そういう意味では短期的に円安を抑制してしまえば円安のデメリットというのは考慮する必要がなくなるということです。

まとめ

今日は先日行われた政府・日銀の為替介入についてみてきました。その効果自体は大して大きなものにはならないでしょう。日本の単独介入では大して大きな効果は期待できません。しかし、頑張っているポーズは見せないといけませんし、今を何とかやり過ごせば円安は収まる可能性があるということを見越しての動きなんだろうと思います。なのでしばらくはやはり円安の動きは変わらないと思いますし、変わるとすればFRBの金融政策が変更の可能性を見せた時でしょう。その時に大きく今度は円高に振れると思われます。特にそのころには黒田総裁は退任している可能性もあり、その場合は後を引き継いだ総裁次第ではさらに大きく円高に振れるかもしれません。そういう意味ではしばらくかわし市場というのはボラリティの大きな展開が続くかもしれません。