東証再編が起きるときの投資家としてのスタンス

先日、モトリーフールに「今年下半期、東証一部の株式非公開化が増える?」というタイトルのレポートが掲載されました。2022年4月に東京証券取引所は現在の「東証一部」「東証二部」「マザーズ」「JASDAQ」という区分から「プライム」「スタンダード」「グロース」という区分に変更になるが、それにより非公開化する企業が増えるのではないかというものです。東証再編のニュースについては聞いた記憶はあるが、正直あまり関心がなく、気にも止めてなかった。しかし、今回のレポートをみてこれは投資家として抑えておいたほうがいいのではないのかと思い、いろいろと調べてみた。

なぜ東証は再編する必要があるのか

現在、東京証券取引所は来年の再編に向けて準備を進めています。そもそもなぜ、このような事をする必要があったのか?理由はいろいろあると思いますが、大きく3つほどあるようです。

①各市場区分のコンセプトが曖昧であり多くの投資者にとって利便性が低い。

②上場会社の持続的な企業価値向上の動機付けの点で期待される役割を十分に果たせていない。

③投資対象としての機能性と市場代表性を兼ね備えた指数が存在しない。

引用:カブヨム 2022年、東証の市場再編!なぜ?上場基準はどう変わる?より

たしかに東証の区分ごとの違いというのは正直私もよくわかっていません。東証一部は大企業、優良企業で、東証二部はそれを満たさない中小の企業、マザーズ・JASDAQは新興企業が上場するものくらいの認識です。なぜそこに上場しているのか、上場するメリットは何かというのもよくわからないですし、おそらくそういう風に考えてる人も多かったのでしょう。実際、東証に上場している企業の約6割は東証一部に上場しているようで、みんな上場するなら東証一部でなければ意味がないと、企業側も認識していたということじゃないでしょうか。とにかく、このままでは取引所の役割が十分に生かせず、ニューヨークやシンガポールなど世界の証券取引所と戦って負けてしまうと思ったのでしょう。そういう危機感から変革していこうとなったのだと思います。

どのように変わるのか

では、具体的にどのようになるのかというと、下図のようになります。

引用:カブヨム 2022年、東証の市場再編!なぜ?上場基準はどう変わる?より

上記は東証一部とプライム市場の比較になりますが、変更点は

  • 株主数は基準が緩和される(2200人以上から800人以上)。
  • 流通株式時価総額は基準が厳しくなる(10億円以上から100億円以上)。
  • 最近2年間の経常利益の総額は基準が厳しくなる(5億円以上から25億円以上)。
  • 純資産は基準が厳しくなる(10億円以上から50億円以上)。

総じて上場基準は厳しくなるようです。株主数は一見緩和されているように見えますが、一部の人間が大部分の株式を保有しているような企業はダメということで、規制強化になります。要は上場してるんだからきちんと投資家に開放しなければいけませんということでしょう。日本ではいわゆる「株式の持ち合い」というものがあります。お互いに株式を持ち合って資本を支えあうというものですが、そういうことはダメですよということです。

流通株式時価総額の基準についても同じ意味でしょう。上場しているにもかかわらず流通量が少ないということは、特定の組織が株式の多くを保有し、健全な市場原理を働かせないようにしている可能性があるということです。そのような行為をされると、市場がうまく機能せず、正しい投資環境を維持できなくなります。そうなれば投資家にとって大きな損失であり、そのような市場は投資家から相手にされなくなるでしょう。更に再編後は国内銀行や保険会社が持つ「株式もちあい」も流通株式にカウントされなくなるようなので相当基準が厳しくなります。

プライムに残るのかどうするか

これを受けて市場ではどのようなことが起こるのか。東証側からすれば全ての企業を条件に照らし合わせて3つの区分に分類するだけなので大して問題はないかもしれません。しかし、分類される企業側としては大変でしょう。再編後もプライムに残りたいと思えばその条件を満たす必要があるので、現在東証一部上場企業の中には必死に対策を考えているところもあるかもしれません。しかし、条件の中には企業の努力によって何とかなるものもあれば、どうにもならないものもあります。経常利益などはそう簡単に上げられるものでもないでしょうし、どうすべきか悩んでいるかもしれません。

その結果起こること

  1. 現状を受け入れ、「スタンダード」や「グロース」で上場を続ける。
  2. 上場を維持するために持ち合いの解消などを行う。
  3. 上場をやめる。

1番は非常にわかりやすいです。東証の条件を素直に受け入れ、上場を続けるわけなので何も余計なことはする必要はありません。ただ、市場が変更になることにより、TOPIXなど株価指数から除外される可能性があり、株価下落の要因にもなるかもしれません。業績は変わらないのに市場が変更されただけで株価が下落してしまえば、企業側としては不満があるでしょう。投資家からも、プライム市場でないというだけで関心を持たれなくなるかもしれないので、今から不安かもしれません。

2番目は状況次第で上場可能と判断した場合、それを満たす行動に出るというものです。具体的に言えば、持ち合いの解消をして流通株式量を増やすなどでしょう。そうすれば条件を満たせるかもしれませんが、市場に株式を大量に売却しすぎると株価下落の要因にもなりますし、そのあたりは神経を使うかもしれません。投資家としてもそういう企業の株を持っていた場合、予想外の動きをする可能性があるので注意が必要でしょう。

3番が今回一番問題になるところでモトリーフールでも注目していたポイントです。上場をやめるということは市場に出ている株を回収するということです。一般的には公開買い付けなどで株式を回収して非公開化することになると思いますが、当然買い付け価格にはプレミアムがつきます。もし、そういう株式を事前に入手できれば短期間でかなりの利益を上げることができるでしょう。それには非公開化しそうな株式を事前にチェックしておく必要があります。具体的には

  • 浮動株か少ない
  • 現金をたくさん持っている。
  • 小型株
  • 株主の数が少ない
  • 以上を満たすような系列会社

などなど、非公開化しそうな要素はいくつかあります。よって四季報などで情報をチェックし、これから起こるであろう非公開化に向けて種を仕込んでおくこということは資産を増やす有効な手段かもしれません。

まとめ

今回は東証再編について調べた結果を述べてみました。モトリーフールのレポートをみて、こういう投資の方法もあるのだなといい勉強になりました。投資で成功する方法は一つではありません。人それぞれ自分に合った方法で資産を築いていければいいと思います。とくに今回のように通常の市場原理とは違う力が働くときというのは大きな利益を得るチャンスでもあるということです。こういうチャンスを利益に変えられるよう常にアンテナは張っておきたいものです。