ドル金利が上がるから円安とは決めつけない方がよい

今年は米国での利上げが予想されています。何回利上げされるかとかいつから開始されるかなど細かな違いはありますが、数回程度の利上げが行われることはもう織り込んできています。そのため日米の金利差が開き、円は今よりも安くなる可能性もあるでしょう。最近も少しずつですが円安の方向へ為替は動いており、米国の金利上昇の予想を反映しているようにも見えます。しかし、必ず円安になるとは限りません。何が起こるのかわからないのが市場というものです。あらゆる可能性を想定し、準備しておくことは必要なことでしょう。そこで今日はゴールドマンサックスのパンドル氏の発言についてみていきたいと思います。パンドル氏は現在の円は過小評価されているとみています。

今年はドルが緩やかに弱くなる

これ(FRB金融引き締め)が今後6か月ドルを押し上げ、もう少し行くかもしれない。しかし、年を通しては昨年よりインフレ圧力が和らぐ可能性が高く、FRB利上げは3-4回ぐらいで済むかもしれない。つまり、世界経済が成長し、FRB(引き締め)が緩やかなら、年を通せばドルはゆっくり減価していくことを意味している。

引用:The Financial Pointer 円は間違いなく安い、極度に過小評価された通貨:ゴールドマン より

ゴールドマンサックスのパンドル氏はこのように述べ今年の為替予想として緩やかなドル安を予想しています。想定よりもインフレが緩やかな場合、現在の予想よりも利上げペースは少なく済むかもしれないとしています。世界経済が順調に成長していくのであればこのような楽観的な未来もあり得るとし、その場合は強力な引き締め政策は必要なくなるというのです。であれば当然ドルは相対的に安くなります。世界中の中央銀行が相次いで締め付けに入っていることもドルが安くなる要因でしょう。現在はオミクロン株の登場により落ち着いていた感染状況も再び悪化してきています。なので確かなことは言えませんが、パンデミック収束に向けた動きは今年も進んでいくでしょう。それが大きなものになるのか、小さなものになってしまうのかわかりませんが、少なくとも大きな経済活動の後退とはならないと思います。それくらいオミクロン株が広がっている中でも世界経済は以前ほどの停滞はしていないと思います。なので想定よりも順調に世界経済が成長していくということも十分にあり得ると思いますし、そのことも頭に入れておくべきでしょう。

このような場合、歴史的に見て円安になる傾向がある

世界経済が停滞期から脱出する場合、大抵米国からそれは始まり、欧州に波及して最後に日本に影響が出るというのが今までの歴史の流れです。当初、米国経済の回復に伴い利上げが米国で行われますが、その時まだ日本では利上げはされていません。なので世界経済の回復初期には円安ドル高になる傾向があるのです。そしてその傾向がすでに現在現れてきているといいます。確かに為替は現在円安ドル高傾向にあります。そういう意味でも市場はすでに世界経済の回復というのを織り込み始めているのかもしれません。

円は過小評価されている?

ここまで聞くと非常にいいニュースのように思えますが、ここで終わりません。パンドル氏は円の水準について以下のように述べています。

「円は間違いなく安い。長期的視点からすれば、極度に過小評価された通貨だ。」

引用:The Financial Pointer 円は間違いなく安い、極度に過小評価された通貨:ゴールドマン より

パンドル氏は現在の円の水準は明らかに安いといっています。長期的なドル円のフェア・バリューとして95円を示していたこともあるそうです。そのくらい円の価値は市場では低くみられている可能性があるのです。実際円の価値というのは日銀の金融緩和政策によって大きく下げられているということもあるでしょう。完全に円の価値を市場に任せればもっと円高に振れるのかもしれません。近い未来に円の価値が上がるということはないような気がしますが、きっかけさえあれば一気に円高に振れる可能性も十分にあることをパンドル氏の発言は示していると思います。実際日本の消費者物価はまだまだ低いですが上昇しそうな気配を見せています。消費者物価が上昇をし始めれば日銀も今のような金融緩和の姿勢を続けることはないかもしれません。やめるという決断をするには相当なエネルギーが必要でしょうから難しいかもしれませんが、その可能性を示唆するような発言をするだけで市場は大きく反応する可能性もあります。そのように実際には何もしていないのに可能性をほのめかしただけで大きく市場が反応するという例はいくらでもあります。そういう意味でも今年はFRBの金融政策も重要ですが日銀の政策についても注意が必要でしょう。特に今年は日銀の審議委員の交代や参議院選挙など大きなイベントが目白押しです。何らかの政策転換があったとしても不思議ではありません。

まとめ

今日は今年の外国為替の動向について考えてみました。米ドルについては利上げはもう確定的であり、あとはどの程度のスピードと上げ幅で行われるかが注目でしょう。今のところFRBが結構タカ派に触れているのでかなりのペースでの利上げが予想されていますが、経済状況によっては変わる可能性も十分にあり得ます。また、円についてもFRBの政策や物価の状況によって予想外の動きがある可能性もあります。むしろその可能性は低くないのではないかと思います。特に我々は日本の低金利が当たり前の状態に慣れすぎてしまっています。なのでちょっとした日銀の政策変更やその可能性を目の当たりにしただけで大混乱が起こるのではないかと心配しています。日本の金利がいつまでもゼロであるわけがありません。必ずいつかは上がります。それがいつになるかはわかりませんが、あまり常識にとらわれず、常に変化に対応できるようにしておかなければなりません。