今後も円安の動きは続いていくのではないかと思える

外国為替市場では円安が進んでいます。先週は1ドル119円台に乗せるなど徐々に円安が進行している状況です。円安は一応輸出企業にとっては追い風となるため通常であれば日本経済にとってはプラスになると考えられてきました。しかし、輸入物価が上昇している現在、為替も円安に進むとなると物価上昇に拍車をかけるため、良い影響ばかりではないでしょう。そういう意味でも為替の動向には非常に注目されます。なので今後の為替市場について今日は考えてみたいと思います。

米国は金融緩和を縮小していく姿勢を鮮明にしている

現在の為替市場での円安の動きというのはやはり金利差が大きな影響を与えているのではないかと思います。米国では非常に高いインフレの影響により、FRBがゼロ金利政策の終了を宣言し、利上げに踏み切りました。今後についても金利を上昇していく姿勢を示し、インフレに対して積極的に対応していく意思を示しました。さらにFRBの資産縮小についても、明確な発言はありませんでしたが行っていく意思は見られました。そういう意味でも米国では金融緩和政策が完全に終了し、経済を正常な状態に戻す動きとなっています。

日本はまだまだ金融緩和継続

対して日本はというと先日、金融政策決定会合後の黒田総裁の発言にもあったように、しばらくは金融緩和政策を変更するつもりはないようです。物価が上昇してきているとはいえ、日本は海外に比べて非常にインフレ率は低く、直ちに金融政策を変更する必要性はないようにも見えます。また、依然賃金も上昇しておらず、実質的な購買力も伸びていない状況では金融緩和をやめることはないのでしょう。なので少なくとも日本では金融緩和の維持が続いていくものと思われます。

2国間の金利差が広がれば為替が動くのは当然

つまり米国と日本との間では金利差が開いており、かつ今後もその幅が開いていくことがほぼ確実です。であればより金利の高い通貨を買おうという流れが出てくることは自然な流れです。なので円安ドル高が進行しているのでしょう。今回の円安の理由についてはいろいろ言われていますが、個人的にはあまり難しく考える必要はないのではないかと思います。物事は意外と単純な理由で動くものです。2つの通貨の金利差が開くのであれば当然その差に沿って為替が動くのは当たり前のことです。

有事でも円買いの動きは見られない

現在、ウクライナ情勢により世界は非常に不安定な状況に陥っています。このような時は今までは円買いの動きが出ることもありました。いわゆる「有事の円買い」というものです。しかし、今回はそのようなことは起きていません。この理由についてはいろんな意見が出てきています。一つには先ほども述べたような日米の金利差によるものです。いくら円を買う要素があったとしてもそれを打ち消すほどの円を売る要素があれば相対的に円が売られるというのは当然です。つまり今回の有事の程度は日米の金利差に比べれて大したことがないということでしょう。これはウクライナ情勢が大したことないのか、日米の金利差が非常に大きな問題なのか、どちらなのかわかりませんがそのために円高にならないという理屈です。

円が買われにくくなっている

また、有事の際には日本の企業が海外にある資産を日本に戻すであろう動きを予測し、円が買われるという話もあります。ご存じの通り、日本は世界一の対外純資産国です。その規模は非常に大きく、それらが一気に動き出せば当然為替市場をはじめ、経済に与える影響は小さくないでしょう。しかし、実際には有事の時にも大きな円買いが行われたという証拠はなく、あくまでそれを見越した投機筋の動きがあっただけだといわれています。ですが、今回はそれらの動きもみられません。対外純資産が世界一の日本ですが、その地位が安泰というわけではありません。2位のドイツが猛追しており、今年にも日本は抜かれるのではないかといわれています。また、海外でも物価上昇の流れを受け、物を大量に輸入している日本は恒常的な貿易赤字国になるのではないかという懸念も出ています。そうなると物を買うときに大量に円を売り、ドルを買う動きが出てきますのでますます円安に拍車がかかるということになります。このように現在の状況を総合的に見た場合、円が買われるということはなかなか起きにくくなっているのだと思われます。

まとめ

今日は最近の円安の動きについてみてきました。今後は日米の金利差の影響から為替は円安に動くことが予想されます。また、輸入物価の上昇などの影響もあり、その動きはさらに加速するかもしれません。そういう意味でも今後の為替市場の動きは非常に注目されます。特に金融緩和の姿勢を貫いている日銀の姿勢がいつ変化するのかということが非常に重要でしょう。現在の金融緩和が近い将来終了するとはとても思えませんが、金融緩和政策を変更するような発言をにおわせるようなことはするかもしれません。それだけで為替市場は大きく動くことになると思います。そういう意味でも今年は為替の動きがどうなるのかということに注意が必要です。