インフレ収束に向けて考えられるストーリーとは

現在のインフレがどのような結末を迎えるのか問うのは誰にもわかりません。しかし、このままインフレが継続するというのはだれも望まないことであり、投資家としても一刻も早く事態の収束を願うばかりです。そして今のところはとても早期の収束というものは望めそうもなく、事態は長期化の様相を呈しています。そういう意味でも今後の展開がどのようになるのかということは皆が注目していることでしょう。そんな中、今後のインフレ予想について非常にわかりやすく説明しているものがあったので、少し前の物になりますが紹介したいと思います。

インフレがどのようになるのかは結果論

ニューヨーク大学教授のアスワン・ダモダラン教授は現在のインフレについて以下のような見解を述べています。

1970年代の記憶があるほど年配の投資家は、その時期を高インフレの10年というだろうが、それは結果論にすぎない。その初めにはインフレ上昇の10年に向かっていると信じる理由はなく、物価上昇の兆候は一時的要因(OPECが便利な言い訳に使われた)のためとされた。

引用:The Financial Pointerより

ダモダラン教授はこのように述べ、過去にあったインフレについて当初からその期間が予想されていたわけではないことを指摘しています。今回もそうですが、インフレが起こった当初というのはこのインフレは一時的なものであり、長期化しないという意見が大勢だったようです。しかし、現実にはそんなことはなく、10年にも及ぶインフレとの戦いの幕開けだったのです。当然当時はそんなことわかるわけもなく、多くの人がこのようなインフレが起こるとは予想していなかったでしょう。今回も同様です。FRBは当初、このインフレは一時的だといっていました。しかし、現在はすでにそのことは撤回してインフレ退治に本腰を入れるようになりました。まさに過去に合った事例と同じ道をたどっているようです。そう考えると今回のインフレ退治にも10年という長い期間を要するのかもしれませんが、それはあくまで結果論です。終わったときにすべてが判明することでしょう。なのでもしかしたら来年の今頃は完全に収束してしまい、以前のような好景気が訪れているかもしれませんし、20年たってもインフレは居座っているかもしれません。それは結局のところ、だれにもわからないのです。

考えられるストーリー

今後の展開について、ダモダラン教授は4つのストーリーを候補として挙げています。

  • 空騒ぎ: 経済は良好なままで、インフレはFRB目標に戻る。企業収益は予想通りで、株式リスクプレミアムは過去の標準に戻る。株価はおそらくかなり過小評価されていることになる。
  • ボルカー再来: 強力な金融引き締めで不況入りするがインフレ・金利は低下。株価はリスク・プレミアム次第。
  • インフレと共存: 経済を持たせるため金融引き締めが不十分となりインフレは高止まりするが、企業収益も持つ。株価はインフレによるリスクプレミアム上昇の度合いによる。
  • 1970年代ショー: 景気後退+高インフレ。「リスクプレミアムは急拡大し、市場はさらに50%近く調整する。」

引用:The Financial Pointerより

教授はこの4つの仮説を述べています。空騒ぎシナリオを期待したいところですが、その可能性は低いと教授は考えているようで、あまり明るい未来は期待できないのかもしれません。であればどの程度の期間になるのかはわかりませんが、厳しい経済状況がこの先待っている可能性は高そうです。

不動産や金も有効でない可能性

過去の景気後退局面ではこのような景気後退局面において、不動産と金が上昇したことが知られています。しかし、今回もそのようになるとは教授は見ていないようです。

  • 不動産: 証券化が進んだことでインフレ・ヘッジの効果が減った可能性がある。
  • 金: 市場規模が十分なく、生産的でない。

引用:The Financial Pointerより

REITなどの登場により、不動産投資の形は大きく変化しました。それにより、不動産も景気後退局面におけるリスクヘッジになりず楽なっている可能性を指摘しています。また、金についてもあまり有効なヘッジ先として機能しないとしています。そういう意味ではこれから訪れる景気後退局面においてはなかなか有効な投資先を見つけるというのは難しいのかもしれません。

まとめ

今日は今後のインフレの展開についてダモダラン教授の仮説をもとに話してきました。教授の話を聞く限り、今後の展開というのはあまりよいものではないような気がします。個人的にも各種経済指標もあまりよいものではなく、企業業績も予想よりも悪くなるものも増えてきました。そういう意味ではやはり大きな景気後退局面というのは避けられないのかもしれません。それがいつ終わるのかというのも結局は結果論でしかなく、今予想するというのは不可能に近いでしょう。そして今後有望な投資先というのもなかなか見つけにくいということで、投資家としてはつらい未来が待っているのかもしれません。しかし、仮に景気後退に陥ったとしても、必ずいつかは終わりが来ます。なので投資は継続して行っていくべきでしょう。そうすれば景気後退局面で投資したものがいつか花咲くときが来るはずです。そのような誰もが悲観しているときにこそ投資をしていた人が、のちに大きな資産を築くことができたのです。そういう意味でも時間という強力な武器を持っている個人投資家はこんな時だからこそ投資を積極的に行うべきなのでしょう。