ロシアへの経済制裁を期に脱炭素の動きは変わるのか

ロシアによるウクライナ侵攻は世界中に大きな影響を与えています。特にエネルギー需給の面で大きな影響があるのではないかと見られており、今後も注意が必要です。これまで特に欧州では地球温暖化対策として、化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーに置き換えようという動きが盛んに行われてきました。化石燃料についても石油や石炭よりも温室効果ガス排出量の少ないとされる天然ガスへの依存が非常に高くなっています。そして欧州はその天然ガスの多くをロシアから調達しているため、今回のウクライナ侵攻は欧州にとって大打撃となるのは間違いないと思われます。ロシアに制裁を加えるには天然ガスを始めとする天然資源をロシアが取引できなくする必要がありますが、それはつまり欧州もロシアから天然ガスを購入できないということです。なので今回の事件は今後のエネルギー政策を含め、環境対策についても影響を与える可能性があります。というわけで今日は今後のエネルギー政策について考えてみたいと思います。

ロシアは世界有数の資源大国

ロシアは世界でも有数の資源大国です。その埋蔵量は非常に大きく、エネルギー市場に対する影響力も甚大です。そして欧州はロシアの天然資源にエネルギーを依存している関係にあります。EU27ヶ国の輸入に占めるロシアのシェアは、原油27%、天然ガス41%、石炭47%と圧倒的です。そのため今回の軍事行動による経済制裁の影響はロシアだけではなく、欧州にとっても非常に痛手なのです。特に天然ガスについてはその特質性により輸送成約が大きいため、欧州の天然ガスのロシア依存というのは問題視されてきたのです。

資源価格は高騰している

最近はインフレによる価格上昇が起きています。それに天候不順により風力発電等がうまく機能せずに天然ガスによる火力発電を多く使っていた関係で、天然ガス価格がさらに上昇していました。最近は一時期よりも落ち着いては来ていましたが、今回のことによりさらに価格は上昇し、かつ高止まりすることが予想されています。そのために今後もエネルギー価格高騰によりインフレの加速や経済の停滞など様々な懸念事項が浮き上がってきているのです。

ロシアに依存しているエネルギーを転換する必要がある

これらの問題を解決するに当たり、一番確実なことはエネルギーの分散化でしょう。今はエネルギーを再生可能エネルギーや天然ガスなど一部のものに高く依存しすぎています。それを従来のように石炭火力や原子力を用いたエネルギー供給体制に持っていけばロシアに対する制裁も十分効果が出てくると思われます。そうでなければ結局はエネルギー源が足りずにロシアに対する制裁を緩め、またロシア依存のエネルギー体制に戻るということにもなりかねません。そういう意味でも今のような早すぎる再生可能エネルギーへのシフトを改めるというのが一番確実で簡便な方法ではないかと思います。

現実的には難しいのではないか

問題は欧州を始めとした世界がその動きを取れるのかということです。正直私はそれは無理なのではないかと思います。そしてなし崩し的にロシアへの制裁が緩められ、今までどおりのロシア依存の高いエネルギー体制に戻ると思っています。そもそも再生可能エネルギーへの流れというのは欧州が強いリーダーシップのもとで進めてきた政策です。日本や中国などアジア諸国ではそこまで熱心に最初から取り組んできたわけではありません。米国も民主党政権になりその色合いが強くはなっていますが、トランプ政権のときなどを見ればわかるように共和党側はそこまでグリーン政策に積極的ではないと思われます。なので欧州にとって見れば自分たちが積極的に進めてきた政策を今更転換するというのはかなり難しいと思われるのです。特に欧州には環境活動家が多く存在しますし、それをめざす団体も数多くいます。それらの人たちを説得し、ロシアへの高いエネルギー依存を改めるために石炭や石油をまた使っていこうという政治家はかなり少数ではないかと思います。そういう意味でも個人的には今回のことにより再生可能エネルギーへの転換の動きにあまり変化はなく、なし崩し的にロシアへの制裁は緩んでいくのではないかと思います。

まとめ

今日はロシアへの経済制裁から今後のエネルギー政策について考えてみました。個人的には石炭を始めとした化石燃料を無理に削減するというのには賛成しません。徐々に変えていけばいいと思うし、そうすることが結果的には近道になると思っています。そういう意味では今回の事件というのは行き過ぎた再生可能エネルギーシフトを改める良いきっかけになると思います。しかし、そうなならないでしょう。欧州としてはいまさら手を引けないだろうし、米国も民主党政権ではまず無理です。日本もそこまで戦略的に外交を展開していけるとは到底思えません。とてもいいチャンスだと思うのでなんとかしてほしいとは思いますが、まず無理でしょう。ロシアへの経済制裁により、今までの脱炭素の流れが変わるかもしれないという論調も出てきていますが、個人的にはなかなか厳しいのではないかと思ってます。変わったほうが日本にとってはいいとは思うのでなんとかしてほしいとは思いますがまず無理でしょう。