ウクライナ侵攻によりFRBの金融政策が転換される可能性が高い

先週、突如として行われたロシアによるウクライナ侵攻ですが、株式市場にとってはどのような影響が考えられるのでしょうか。この数日、いろいろな識者の意見を見てきましたが、やはり商品価格に与える影響は大きくなりそうな感じがします。その影響によりインフレの長期化は避けられず、景気を予想よりも冷やすこととなりそうです。そのため当初予想していたよりもFRBの金融政策は緩やかなものとなる可能性が高くなり、株式市場にとってはプラスに働くかもしれません。しかし、短期的には株式市場は上昇するかもしれませんが、長期的に見ればいずれはインフレに対応しなければならなくなり、株式市場は下落するかもしれません。その可能性について今日は考えてみたいと思います。

ウクライナ侵攻によりFRBの金融政策が変わる可能性が高い

アリアンツ経済顧問モハメド・エラリアン氏がCNBCのインタビューで、ロシアのウクライナ侵攻がFRBの金融政策に対してどのような影響があるのか問う点について述べています。

3月の50 bp利上げも完全になくなり、多くの人が言っていた今年8-9回の利上げもなくなった。感謝しないといけない。米経済はそうした金融政策の急ブレーキに耐えられなかっただろうから。

引用:The Financial Pointer ウクライナ影響:マーク・モビアス、モハメド・エラリアン、ブラックロック、ジェフリー・ガンドラック より

エラリアン氏はこのように述べ、今回のウクライナ侵攻によって3月に予定されているFOMCでの利上げについて、50bpの上げはなくなったとみています。これまでは予想以上の消費者物価の伸びに加え、FRBのタカ派転向によって市場は3月には0.25bpではなく、0.5bpの利上げについても織り込んできたように思えます。しかし、今回の事態によってそれはなくなったということです。確かにウクライナ侵攻によって天然ガス価格など商品市況は急激に上昇しています。これはインフレ圧力をさらに高めるものです。明らかに経済にとっての足かせであり、景気は大きく後退する可能性も出てきています。労働市場は順調なので、FRBはインフレを抑えるためにも強めの金融政策を実行しようとしていたと思われますが、景気後退と労働市場が不調になってくるのであれば金融政策についても厳しいものは取れなくなるでしょう。そういう意味でも今回の事態により、今年の利上げというのは当初予想していたものよりも緩やかなものとなる可能性が高いのです。

インフレの長期化はほぼ確実、しかし株式にはプラスかもしれない

当然利上げをしないのであればインフレが収まるという可能性はかなり低くなります。もちろん生産性が向上し、FRBの金融政策によらずともインフレが収まる可能性もないとは言えませんが、かなり他力本願なところがあり、あまり期待するのは良くないです。そういう意味では現在の高いインフレというのが長期化する可能性が高くなってきたということです。ただ、インフレが長期化し、FRBの金融政策も緩やかなもとになるというのであれば名目上は株式市場は上昇する可能性があり、株式は非常に有効な投資先となるでしょう。そういう意味では今後も米国の株式市場は投資する価値が十分にあると思います。

いつかはインフレに対処しなくてはならなくなる

しかし、この高いインフレがいつまでも続いて言い訳がありません。結局は問題の先送りであり、いつかは対処しないといけなくなります。本来であれば今やるべきなのでしょうが、緊急事態につき今は目をつぶるというだけです。そういう意味では短期的には株式市場はいいかもしれませんが、のちに株価が下落する可能性というのも考えておく必要があるでしょう。それがいつになるのかはわかりませんが、少なくともロシアによるウクライナ侵攻が経済に悪い影響を与えているうちは心配はないと思います。それが終結したときに、インフレが収まっていなかったりその気配がみられないのであれば、FRBはインフレを抑えるために強硬手段に出るかもしれないのです。

まとめ

今日はロシアによるウクライナ侵攻が株式市場や金融政策に与える影響について考えてみました。今回のことによりFRBは軌道修正してくることはほぼ間違いないと思われます。今まではかなりタカ派の様相を示してきましたが、おそらくはその姿勢を改めるのではないかと思います。そのため株式市場は大幅な上昇はないとしても大暴落ということもなくなり、緩やかには上昇するのではないかと思います。インフレが高止まりするのであれば実質的な購買力の低下は避けられないと思いますが、名目上の株価は上昇が見込まれるためです。そのため米国株式は今年も買いでいいのではないかと思います。ただ、結局は問題の先送りであることには変わりなく、高いインフレがずっと居座るために、いつかはその影響のため株式も下落する可能性を頭に入れておく必要があるでしょう。そうならないためにも生産性を上げ、FRBの金融政策によらずともインフレが終息できるようにしなければなりませんが、なかなか難しいのではないかとは思います。