ドル円の適正価格は90円?

日米の金利差もあり、為替は日々円安に動いています。現状米国は利上げをハイペースで行っており、日本は全く金利を上げないという状態が続いています。なので円安ドル高になるのは当たり前といえば当たり前です。しかし、この数値というのは市場が円とドルの力関係を適正に判断したものではなく、金融当局が協力に介入した結果であることは言うまでもありません。であれば、適正価格はいくらになるのでしょうか。それを示したニュースが先日発表されていたので今日はその記事についてみていきたいと思います。

円の適正価格は90円74銭

それは6月の27日にBloombergに掲載された記事で、円の適正価格について述べたものでした。

日本銀行が世界的なタカ派の動きに加わるか、あるいは米経済がリセッション(景気後退)に近づく場合、円はバリュエーションから判断すると、フェアバリュー(適正価格)が下支えになる可能性がある。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の分析が示した。

対ドルで24年ぶりの低水準付近にある円相場は経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)に基づくBEER(均衡為替レート)モデルが示す適正価格から大きくかけ離れていると、ストラテジストのミリア・キリアコウ氏は24日のリポートで指摘した。同日の円相場は1ドル=135円25銭付近で推移したが、適正価格は約49%高い90円74銭と推定されるという。

キリアコウ氏はリポートで、「バリュエーションは為替相場について考える枠組みを示し、『アンカー(いかり)』となることで、一時的な振れやノイズから構造的な動きを差別化するのに役立つ」と指摘。「政策の不確実性が続く中で焦点がファンダメンタルズに向かってすぐに変化するとは見込んでいないが、相場がどれほど押し流されたかを判断することはなお価値がある」とした。

BEERモデルは、ドルがG10通貨全般に対し過大評価されている状況も示しており、ユーロは対ドルで引き続き過小評価されているという。ただし、ユーロ圏の貿易および経常バランス悪化を背景に、推定均衡レートを1ユーロ=1.25ドルから1.22ドルにシフトさせたともBofAは付け加えた。

引用:Bloombergより

このようにバンクオブアメリカによれば、ドル円の適正価格というのはなんと90円74銭という今の感覚からするととてつもない価格なんだそうです。つまりそれだけ現在の為替相場というのは円の価値を過小評価しているということです。日本人としてはそれだけ高い評価をしてもらえるということはうれしいような気はしますが、仮に今その為替レートになったとするととんでもないことが起こりそうです。物価高に苦しんでいる輸入業者などはかなり恩恵を受けるかもしれませんが、自動車など輸出業者はとんでもない打撃をこうむることになるでしょう。さすがにそこまでの円高というのは今すぐに起こるということはないとは思いますが、市場にすべてをゆだねているとそうなるということなのです。裏を返せば日銀が介入することによって円の価値を約50%も下げているということです。

いいことではないが仕方のないこと

これがいいことなのかといわれれば、さすがにいいとは言えないでしょう。少なくとも正常な状態ではありません。なので何とかして正常な状態に持っていく努力はすべきだと思います。当然日銀だってそのことは理解しているでしょう。しかし、今はその時ではないということなのだと思います。為替のことだけを考えればそうなのかもしれませんが、他の要素を考慮するとそうするわけにもいかないということです。特に日銀の目的というのは物価の安定と、金融システムの安定です。つまり為替を円安にするとか円高にするということではなく、為替を正常な値にするということでもないのです。もちろん為替が安定的な方がいいとは思いますが、物価と金融システムの安定のためには為替水準を操作するということは仕方のないことなのかもしれません。

小さなきっかけで大きく為替は動く

いずれにせよ、現在の為替というのは金融当局によって50%もゆがめられているということです。なので金融政策に何らかの変化があればその50%を修正するように為替は動いていくということでしょう。それをバンクオブアメリカも指摘しているということです。今のところその心配というのはあまりないような気はします。物価も上がってきているとはいえコアコアで見るとまだ1%程度ですし、黒田総裁も全く政策の変更について考えていないという感じです。しかし、今後についてはわかりません。仮に物価が安定的に2%の上昇していけば、当然その時は黒田総裁は金融政策の変更について話し出すと思います。さらに日銀の総裁は来年には変更されますので、新しい総裁がどのような人なのかによっても物価が2%の上昇をする前に金融政策の変更がされるかもしれません。このように安倍政権誕生から続いてきた金融緩和政策の大きな転換が起こる可能性があるのです。そういう意味では投資家としても注意しておかなければならないでしょう。

まとめ

今日は円の適正価格について考えてみました。さすがに今すぐに為替が円高に向かうということはないでしょう。むしろ今の日米の金融当局を見ていると円安に進む可能性の方が大きいと思います。しかし、その金融政策が修正されるときというのは意外に近いかもしれないということです。そしてそれが修正されれば、以前のように1ドルが100円を割るという状態に言っても何ら不思議ではないのです。そういうことは頭に入れておくべきでしょう。特に来年の日銀総裁人事には要注意です。