日本の金利が上昇する可能性を排除できなくなっているのではないか

世界的な問題となっているインフレですが、FRBなどは一貫してこれは一過性のものだといってきました。しかし、先日のブログでも述べましたが、FRBもインフレは一過性ではない可能性を十分意識していことが判明しています。よって多くの識者が心配している通り、インフレは今後数年にわたり世界経済を苦しめる可能性が出てきています。それは当然日本にも影響を与えることになりますが、それはどのようなものでしょうか。いろいろな影響は考えられますが、その中でもインフレによって今まで行われてきた金融緩和の流れが変わる可能性があるのです。その可能性についてThe Financial Pointer®では佐々木融氏のコラムから引用して述べています。非常に興味深く重要な指摘であり、投資家としてもきちんと認識しておく必要があると思います。そういうわけで今日は日銀の政策の今後について考えてみたいと思います。

Reuters Japan

少し前まで一過性と見なされていた世界各国でのインフレ率の大幅な上昇が、実は構造的な要因を背景とした現象で、長期的に続く可…

世界的なインフレ

現在世界経済は急激なインフレに悩まされています。新型コロナウィルスパンデミックによる経済活動の縮小から再開という急激な変化により、需給のバランスは大きく崩れました。各国の中央銀行も大規模な金融緩和を行っており、市場に大量の資金が供給され続けています。その結果、10月の米国の消費者物価指数は前年比プラス6.2%と市場予想を上回り(5.9%)1990年11月以来の上昇となりました。ヨーロッパでも軒並み消費者物価の上昇が起こっており、JPモルガンが算出する日本を除く先進国の10月消費者物価指数は前年比はプラス5.1%と1991年以来、30年ぶりの上昇率となっています。先進国では高齢化が進み、世界的に労働力が不足するなど構造的な問題が元々ありました。そこに新型コロナウィルスの影響が重なり、事態を急速に悪化させたのです。さらに昨今の環境規制の影響もインフレを後押しする形となりました。その結果、大幅なインフレが起こったのです。

日本に与える影響

日本にも当然その影響は起こります。消費者物価は依然低水準で落ち着いていますが、企業間物価は大幅に上昇し、10月は前年比プラス8.0%となっています。これは実に41年ぶりの数字です。第二次オイルショック並の数字でとても大きな上昇となっています。しかし、消費者物価は依然上昇していません。つまり企業がこの物価上昇分を吸収していることになります。日本では賃金が全く伸びないため、価格上昇に対する抵抗はとても強いです。したがって企業はなんとか価格を上昇させないようにと努力を重ねてきました。結果これまでのところ消費者に価格転嫁することなく来ることができました。しかし、その努力も流石に限界というところでしょう。最近は食品業界を始め、多くの企業が値上げの発表をしています。これだけ強いインフレ圧力の中においてはさすがの日本の消費者物価もそろそろ上昇しそうな感じです。そうなると今度はそのコストを消費者が払うこととなります。今までは企業が支払ってきましたが、今度は消費者がそれを肩代わりできるでしょうか。賃金上昇がほとんどない現状においてはなかなか難しいような気がします。しかし、先日も言いましたが個人の資産は今年も大きく増えています。なのでもしかしたら商品価格の上昇をうまく吸収し、経済成長ができるかもしれません。いずれにせよ、日本もデフレがようやく終わり、物価が上昇する可能性は高くなったと言えるでしょう。

誰もそのことを認識していない

実際に消費者物価が上昇するかはまだわかりませんが、その可能性が出てきたのであれば我々は考えなければならないのです。つまり、消費者物価が上昇を始め、日本にもインフレが起きた場合のことです。物価が上昇してくれば当然日銀の政策にも大きな影響を与えます。現在日銀は物価の2%程度上昇することを目標としていますが、今はまだ物価の上昇は起きる気配がありません。しかし、今後消費者物価が上昇を始めれば日銀は今の金融緩和の政策を転換するかもしれないのです。量的緩和政策は物価を上昇させるために行っていますから、当然といえば当然です。物価が上昇しているのにもかかわらず緩和を続ければ今アメリカが直面している問題と同じことが起きることになります。なので、金融緩和縮小の方向に動くでしょう。そうなれば経済状況は大きく変わります。株価対する影響も小さくはないでしょう。しかし、残念ながらその可能性を認識している人はあまり多くはないようです。JPモルガンが世界中の投資家に行ったアンケートでは多くの投資家が政策金利の上昇を予想していません。30年に渡るデフレと長期間の金融緩和、世界中がインフレになっても上昇しない消費者物価など日本は本当に特殊な国となってしまったので、金利が上がることなど誰も想像していないのです。しかし、消費者物価が上昇し始めれば日銀はその可能性を考えないわけには行きません。おそらくはその可能性を示唆するだけでも大きなインパクトを市場に与えることになるのでしょう。

まとめ

今日は世界的なインフレに伴う日本の金融政策について考えてみました。正直、私もこの記事を読むまでは日本の金利が上昇するなど考えてもいませんでした。最近は身近な商品が相次いで値上げの発表をしています。世界的なインフレが今後も続く可能性が非常に高くなってきているので、日本の消費者物価の上昇もかなりの確率で起こるのではないかと思います。そうなれば当然日銀は政策を変更するだろうし、その可能性についてはそう遠くない将来に示唆されるのではないかと思います。いかに黒田日銀総裁であっても消費者物価が上昇してくれば量的緩和縮小について検討しないということはないと思います。インフレや金利上昇など日本にとってはずいぶんと縁遠くなっていたものがすぐそこまで来ている可能性は頭に入れておく必要がありそうです。そのうえでどのように投資したらいいのかを考えるべきです。