相次いで発表された楽天のサービス改悪とSBIのしたたかさ

投信積立は個人の資産形成の方法として非常に人気があります。最近では証券会社ごとに様々な特典を付け、個人投資家を取り込もうという動きが活発になっています。その一つとして投資信託の保有に対してポイントを付けるというサービスがあります。投資信託を保有しているだけで毎月ポイントが付くので長期投資で投資信託を保有している人にとってはとてもメリットのある特典として人気があります。その先駆けとなったのは楽天証券であり、利用している人も多いのではないかと思います。しかし、先日楽天証券から投信積立のポイント制度の変更のアナウンスがあり、それが大きな改悪であったため投資家から失望の声が多く上がりました。大変残念な結果ですが、仕方がありません。そこで今日は今回の変更点について確認していきたいと思います。

楽天証券

このたび、投資信託資産形成ポイントの進呈条件について「一定の残高を保有している場合」から「一定の残高をはじめて達成した場…

今回の楽天証券の制度変更の概要

先日楽天証券からあった発表では来年4月1日より投資信託の保有に関するポイント制度を変更するとなっていました。その内容というのは従来、投資信託の保有残高に応じて毎月ポイントが付与されていましたが、それをある一定額に最初に到達したときのみポイントを付与するとなりました。つまり、保有するだけでポイントをもらえなくなってしまったのです。残高が10万円、30万円、50万円と一定額に到達したときに一回だけポイントが付与されるということです。今までは継続的にポンとが付与されていたのとは違い、ある金額に到達したときに一回だけポイントがもらえるだけなので大幅な改悪となり、ポイントも含めた利回りは大幅に減少することになりました。

引用:楽天証券ホームページより

この決定は大きな反響を呼んでおり、楽天証券に対する失望の声が多く上がっています。投資信託の積み立てに対する利回りを計算するにあたって、ポイントの存在は無視することはできません。長期投資の場合、それがわずかなものであっても20年、30年と積み立てていけばとても大きな差となってきます。投資信託を選ぶ際、信託報酬を0.01%ですら気にして選んでいる人も多いと思いますし、私もそうです。そのような人間からすると今回に変更はとても無視できるものではありません。

改悪が続く楽天ポイント

楽天ポイントは楽天グループ全体で使われているサービスで、今や日本で一番利用されているポイント制度の一つといっていいでしょう。それだけに利便性もよく、還元率もよかったため消費者から非常に人気のポイント制度として支持されてきました。しかし、最近は楽天証券に限らず、サービスの改悪が相次いでいます。SPUの改定や各種付与ポイントの減少等今まで断トツのポイント制度を誇ってきましたが、その魅力はかなり薄れ来た印象です。もちろんまだまだ他のポイント制度と比較して劣っているというわけではありませんが、その差が縮まっていることは事実でしょう。おそらく楽天としても今までは顧客囲い込みの戦略もあり、無理をしてポイント制度を維持してきたことはあるのだと思います。それをここにきて修正してきたということでしょう。ポイント制度というのは株取引や商品の売買などの副産物であり、あくまでおまけの位置づけです。なのでこういう時には真っ先に改悪の対象になってしまうのは致し方ないのかもしれませんが、非常に残念なところです。

マネーブリッジの優遇金利も改悪

引用:楽天銀行ホームページより

さらに改悪は続きます。楽天証券と楽天銀行の間での口座連携サービスである「マネーブリッジ」についてです。今まではマネーブリッジを利用していると優遇金利が適応され、普通預金金利が0.001%から0.1%へと100倍もの金利が付くようになっていました。しかし、来年4月からは300万円以下は今まで通り0.1%ですが、300万円を超える部分については0.04%となり、大幅な改悪となるのです。マネーブリッジは銀行口座と証券口座間での資金移動の操作を手動でせずとも自動で行ってくれるので非常に便利なサービスです。そのうえ100倍もの金利が付くのですから非常に人気があります。しかし、ここへきての改悪です。これでも通常金利の40倍ですから悪くはないとは思いますが、印象は非常に悪いです。ここまで立て続けに改悪が続くと投資家からはあまりよく思われないでしょう。

「マネーブリッジ設定での普通預金金利の優遇金利改定のお知らせ」楽天銀行は日本最大級のインターネット銀行です。各種お取引毎…

SBIはこの隙を見逃さない

引用:PR TIMESより

楽天が相次いで顧客サービスの質を落とす一方、その動きをチャンスと見て動き出したところがあります。ご存じ、SBI証券です。SBI証券は楽天証券とともに個人投資家から非常に人気のある証券会社です。取扱商品も豊富で手数料も安く、昔から個人投資家に人気がありました。そのSBI証券が楽天証券の発表のあった翌日、「投信お引越しプログラム」を発表しました。これは通常他社からの投資信託の移管にかかる手数料をSBI証券が負担しますというものです。これまでも期間限定で行ってきことはありますが、来年1月からは恒久的に実施するとしています。これは明らかな楽天証券に対する挑戦で、この動きをチャンスと見て顧客の囲い込みに動いているのでしょう。楽天とSBIでは最近の動きではとても大きな差があるように思います。楽天はポイント制度などの改悪が相次いでおり、非常にマイナスなイメージが強くなっています。対してSBIは新生銀行に対する買収劇など多くの地銀を取り込み、積極的な事業展開をしています。そしてライバルの動きを瞬時にとらえ、素早く顧客獲得に動いています。最近の動きを見る限り、SBIグループの方が非常に積極的な事業展開をしており、かつ顧客サービスに真摯に取り組んでいる印象です。

プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES

株式会社SBI証券のプレスリリース(2021年12月28日 16時00分)「SBIプレミアムチョイス」および「投信お引越…

まとめ

今日は楽天証券のサービス改悪についてみてきました。ポイント制度の変更は仕方ないとしてもやはり残念なものです。ポイント制度というのはもう消費者にとって当たり前のものとなっており、おまけという位置づけではありません。そんなに軽くはないのです。そこを勘違いしてしまうと大きな失敗をすることとなるでしょう。もし楽天がそのように考えているのであれば、改めてもらいたいものです。対してSBIの姿勢は非常に好感が持てます。楽天の発表翌日にすぐ対応策を発表するなどこのフットワークの軽さは他社も見習ってほしいものです。いずれにせよ、このような競争原理が働いているネット証券業界というのは顧客にとって非常に有益であることは変わりありません。この動きがどんどん加速し、さらにサービス向上につなげていってほしいと思います。今回は楽天の改悪を厳しく批判をしましたが、総合的に見て楽天のサービス自体が悪いわけではありません。むしろ今までが良すぎたために印象がよくないのだろうと思います。しかし、このままでは楽天も顧客離れが進んでしまう可能性があるので何とかここのあたりで踏ん張ってほしいと思います。そうなれば結果として我々消費者が一番大きな利益を享受できるようになるでしょう。