レイ・ダリオ氏による個人投資家へのアドバイス

先日、The Financial Pointerにレイ・ダリオ氏の記事が掲載された。自身のの著書の内容を自分のSNSで公表してしまうという珍しいことをしたらしい。これは本を売るよりも自身の考え方を広く伝えるためという我々にとっては非常にありがたい行為だったらしい。まあ、あれだけの実績を残しているのだから本の印税程度の金などどうでもいいのでしょう。とにかく、レイ・ダリオ氏の考え方を知るいい機会なので今日はそれについてみていきたいと思います。

歴史は繰り返す

パラダイムは通常10年前後続き、時としてその中で大きな修正が起こる。パラダイムは持続的な一連の条件によって引き起こされ、条件は極端からもう一方の極端の間を行き来する。例えば、狂騒の1920年代の次には不況の1930年代があり、インフレの1970年代の次にはデフレ的な1980年代があった。例えば、1920年代には株を持ち債券を避けるべきだったし、不況の1930年代には逆だった。インフレの1970年代には金のようなハード資産を持ち債券を避けるべきだったし、デフレ的な1980年代には金融資産を持ちハード資産を避けるべきだった。

ダリオ氏はとても歴史を研究しており、それによって投資家としての成功したのだと思っています。いつも過去の事例を踏まえて合理的な指摘をしており、非常に納得のいく結論を我々に示してくれます。上記のように歴史を振り返れば経済状況というのはつねに変化していきます。インフレのような時もあればデフレのような時もあります。その時々の状況により株を持っていた方がいいのか債権がいいのか、または不動産なのか、金などの実物資産がいいのか、そのサイクルというのは定期的に訪れ、常に変わっていくのです。何か一つのことが何十年も継続的に起こるということはまずありえないということでしょう。

ダリオ氏の予想

それでは今後はどのようなことが起こるのでしょうか。ダリオ氏は現在の状況と過去を比べると、今後は狂騒+インフレが起こると予想しています。現在非常に高いインフレが起こっていますが、今後もこの状況は続いていくというのです。

もちろん数年のうちには、たとえば中央銀行による金融引き締めなど、修正もあるだろう。しかし、許容できるリスク度合いの、良く分散された、現金でないポートフォリオより、現金のリターンの方が良くなるような状況を政府が持続的期間許容するとは考えていない。そうすれば悲惨な問題を生み出すことになるからだ。

インフレが続くというのは政府や中央銀行としては黙ってはいないでしょう。通常であれば当然金利を上げるなどしてインフレを抑制しようとするはずです。しかし、ダリオ氏はそれはできないだろうとみています。日本は特にそうですが、長期にわたる金融緩和や低金利が続いてきたために、それを前提とした経済状況が出来上がってしまっているのです。そのために、その状況を変更しようとすれば実体経済は大きく後退してしまうというのです。そしてそれは米政府やFRBは許容できないだろうとみています。景気が後退すれば当然国民からの反発は必至ですし、なかなか踏み切れないだろうということです。なので強力な引き締め政策などは自ら行うことができず、それをせざるを得ない状況になるまで続くとみているようです。

我々へのアドバイス

そのような状況が予想される中、我々投資家はどのようなスタンスで投資をすればいいのでしょうか。そのアドバイスもダリオ氏はしてくれています。

  • 米ドル・ユーロ・円建てのクレジット資産、特に短期債務資産は著しくマイナスの実質リターンであり、保有することは望ましくない。
  • 通貨・国・資産クラスについて良く分散されたポートフォリオを保有することが望ましい。

内容としてはダリオ氏がいつもいっていることです。ダリオ氏はとにかく現金を嫌います。確かにインフレが予想されるような状況では現金や債券は実質的にマイナスになりますから当然かもしれません。現金はあくまで最低限の保有にとどめ、幅広い資産に分散したポートフォリオを組めといっています。この辺りの話というのは非常に基本的なことだなと思います。何も特別なことではありません。そういう意味では投資というのは何も難しいことではなく、当たり前のことをやっていけばいいのだろうと感じます。

まとめ

今日はレイ・ダリオ氏の発言をもとに今後の投資姿勢について考えてみました。現在のインフレがいつ収束するかはわかりませんが、それなりに長期化するのではないかというのは個人的には同意するところです。強力な引き締め政策をすれば短期間でインフレを抑えることができるとは思いますが、それをする勇気は政府や中央銀行にはないでしょうし、それに伴う景気後退のリスクについても国民も許容しないでしょう。そうであればこのままズルズルと行けるところまでいって、限界になったら強力なショックを与えて鎮静化させるということになりそうです。であれば、いずれ世界はスタグフレーションの状態に陥り、ボルカーショックが再び起こるというような状況もあり得るということでしょう。非常に厳しい状況が起こるかもしれませんが、きちんと分散されたポートフォリオを構築すれば被害は極力減らせると思います。いずれにせよ我々個人投資家にできることは限られていますし、ほぼ決まっています。何が起きても原則を曲げず、淡々と投資をしていこうと思います。